一般廃棄物収集運搬業の許可を市区町村が新規に出さない法的根拠

「一般廃棄物収集運搬業の許可を新規に取得したい」

という電話が毎週のようにかかってきます。

 

一般廃棄物収集運搬の許可は、

自治体によって新規に取得できたりできなかったりします。

当事務所では、問い合わせのお電話いただくたびに、

日本中の市区町村に電話して、

新規に許可が下りるかの可能性の有無をお答えしています。

 

もちろん、新規に許可取得可能な自治体もありますので、

当事務所でも一般廃棄物収集運搬業の許可申請は数多くやっています。

 

一般廃棄物収集運搬業は、産業廃棄物収集運搬業と比較して、

どうしてこうも取り扱いが異なるのでしょうか?

今日は、一般廃棄物処理業許可申請が産業廃棄物処理業許可申請とは大きく異なる、

その理由について解説します。

この記事の目次

  1. 産業廃棄物収集運搬業許可は要件が整えば必ず下りる
    産業廃棄物許可は警察許可
  2. 一般廃棄物収集運搬業許可を下すかどうかは市区町村の裁量
    一般廃棄物許可の裁量の根拠、廃掃法7条5項とは
    一般廃棄物許可は計画許可
  3. 一般廃棄物収集運搬の新規許可を取得できるかを市町村に問い合わせると
    一般廃棄物処理業は足りているので新規募集の予定はない
  4. 市場原理と一般廃棄物処理業参入規制
    新規参入規制と既得権

 

産業廃棄物収集運搬業許可は要件が整えば必ず下りる

同じ廃棄物収集運搬業の許可といえども、産業廃棄物と一般廃棄物では大きな違いがあります。

どちらも「許可」という言葉を使ってはいますが、

この「許可」という言葉の意味合いが産業廃棄物と一般廃棄物で全く違うのです。

 

産業廃棄物許可は警察許可

営業許可という場合、普通は要件を満たせば、必ず下ります。

建設業許可でも、飲食店の営業許可でも、

法律上の要件を満たしていることを疎明する資料を添付書類として提出すれば、

必ず許可は下ります。

 

このような許可のことを、警察許可といいます。

警察というと〇〇県警のお巡りさんを想像するかもしれませんが、

この場合の警察とは、もう少し広い意味で、

社会公共に支障がなければ営業を許容するというものです。

 

誰でも、要件を満たせば許可を取得できるのが産業廃棄物収集運搬業です。

逆に許可を満たさない場合とは、

欠格事由に該当する、収集運搬基準を満たさない、経理的基礎を満たさない等であって、

それを満たせば必ず許可は下りるのです。

 

一般廃棄物収集運搬業許可を下すかどうかは市区町村の裁量

一方、一般廃棄物収集運搬業の許可というのは、

産廃の許可のように要件を満たしてさえいれば必ず下りる警察許可とは異なります。

 

一般廃棄物許可の裁量の根拠、廃掃法7条5項とは

法律の条文を出してしまって申し訳ないのですが、廃掃法7条5項には、以下の定めがあります。

廃棄物の処理及び清掃に関する法律 第7条第5項

市町村長は、第一項の許可の申請が次の各号に適合していると認めるときでなければ、同項の許可をしてはならない。

  • 当該市町村による一般廃棄物の収集又は運搬が困難であること。
  • その申請の内容が一般廃棄物処理計画に適合するものであること。

 

この条文の文言は特殊です。

  • 市町村による収集運搬が困難
  • 廃棄物処理計画に適合する

この2つの要件が整っていない限り、市町村長は一般廃棄物の収集運搬許可を出してはならない、

という条文なのです。

 

一般廃棄物許可は計画許可

平たく言えば、

市町村での収集が困難な場合であると市町村が判断した上で、

市の計画に適合していると市町村が判断して、

はじめて許可が下ります。

つまり、一般廃棄物収集運搬業の許可には、

市区町村に強い裁量権があるのです。

 

これは、産業廃棄物収集運搬業の警察許可とは全く異なる計画許可になっています。

産廃業許可と違って、一般廃棄物収集運搬業の許可の取得が大変な理由は、

この裁量権にあります。

 

一般廃棄物収集運搬の新規許可を取得できるかを市町村に問い合わせると

当事務所では、日本全国の都道府県レベルでの産廃業許可の情報はかなり把握しているのですが、

自治体数が格段に多い市区町村の一般廃棄物許可に関しては、把握困難です。

 

そこで、新規の許可を取得できるかという問い合わせをいただくたびに、

市区町村に電話調査をして、許可の取得が可能かを聞いています。

 

一般廃棄物処理業は足りているので新規募集の予定はない

その中で、一番多い回答が、

「現在、一般廃棄物収集運搬業の許可業者数は足りているので、

新規の許可を出す予定はない」

という取り付く島もない回答です。

 

これはすなわち、上記廃掃法の条文にのっとり、

市区町村による収取運搬が困難でなく、

または市区町村による処理計画に新規許可は適合しない、と判断されたということです。

許可を出すも出さないも、市区町村の裁量だということ。

 

市場原理と一般廃棄物処理業参入規制

一般廃棄物収集運搬業の許可申請が産業廃棄物の収集運搬業の許可申請と大きく異なる理由は、

この廃掃法7条5項にありました。

 

私は、経済学が好きなんですが、

この一般廃棄物処理業に対する公権力による参入規制は、

市場原理を人為的に歪めるものであることは間違いないと思います。

 

新規参入規制と既得権

許可制でありながら、市区町村が事実上新規許可を出さないということは、

すでに許可を有する業者にとっては、

公権力が人為的に作り出した既得権益により護られているということになります。

 

それでもなお、一般廃棄物の新規許可が制限されている理由は、

一般廃棄物の処理責任を法が市区町村に負わせていることに求められると思います。

もちろん、新規の一般廃棄物処理業の許可を出している自治体もたくさんあります。

 

(河野)