建設業者の取得すべき産業廃棄物収集運搬業を業種ごとに解説

当事務所で収集運搬業の許可を取得している顧客のうち約半数は、

建設業者です。

顧客数ベースでは、当事務所を一番ご利用いただいているのは、

建設業者ということになります。

許可数ベースでは、1社で多数の許可を持っていることの多い、

廃棄物処理業者や運送業者が多くなります。

 

今回は、建設業者の取得すべき産業廃棄物収集運搬業許可について記事を執筆します。

この記事の目次

  1. 建設業者が収集運搬業許可を取得する理由
  2. 下請工事にはなぜ収集運搬業許可が必要になるのか
  3. 解体工事業と収集運搬品目
  4. 電気工事業と収集運搬品目
  5. エアコン工事と収集運搬業許可
  6. 土木工事業と収集運搬品目
  7. 建設業者の産廃業許可更新手続忘れと講習受け忘れが非常に多い
  8. 建設系マニフェストについて

 

建設業者が収集運搬業許可を取得する理由

建設業界というのは、元請から一次下請へ、さらに二次下請へと流れる

業界特有の階層構造があります。

 

建設業者が収集運搬業の許可を取得する理由には、

多くの場合、

元請から収集運搬業許可を取得するようにと言われた

工事を受注する要件として収集運搬業許可が必要

といった事情があると思います。

 

昨今、建設業者は、元請のコンプライアンス(法令順守)の影響で、

  • 株式会社または有限会社
  • 建設業許可
  • 社会保険

の3つの要件を整えていることを求められていますが、

それに加えて、収集運搬業許可を求められることが多くなっています。

 

下請工事にはなぜ収集運搬業許可が必要になるのか

建設現場から排出される建設系廃棄物に関しては、

元請が排出事業者になります。

廃掃法という法律で、元請に排出事業者責任を負わせることで、

建設系廃棄物の不適正処理を防止しています。

 

ところが、実際に工事に当たっている業者は、

一次、二次、あるいはそれ以降の下請業者です。

下請業者が工事をしても、排出事業者は下請業者ではなく、

元請業者なのです。

 

現実に、産業廃棄物を収集運搬しているのは下請業者ですが、

排出事業者は元請業者であるとすると、

下請は元請の排出した産廃を運搬していることになります。

 

これがすなわち、他人の委託を受けて産廃を運搬する、

産業廃棄物収集運搬業なのです。

収集運搬業の許可を元請が下請けに要求する理由は、ここにあります。

また、ほとんどの建設業者は、このような事情で収集運搬の許可を取得しています。

 

解体工事業と収集運搬品目

建設業者の中でも、最も多く産業廃棄物を収集運搬しているのは、

解体工事業者かもしれません。

解体工事業者は普通はダンプを保有していますので、

ダンプで運搬するような品目の許可を取得することになります。

 

建物を解体したときのコンクリートがら、石膏ボード、

鉄筋、ガラス、木など、

解体工事からは大量の産業廃棄物が排出されます。

 

この廃棄物は、建設リサイクル法という法律により、

きちんと現場で品目ごとに分別したうえで再資源化することを義務付けられています。

 

解体工事業者が必ず取得すべき品目は、以下の通りです。

  • 廃プラスチック類
  • 紙くず
  • 木くず
  • 繊維くず
  • 金属くず
  • ガラスくず・コンクリートくず及び陶磁器くず
  • がれき類

 

もちろん、これより多くの品目を取得しても構いません。

当事務所で許可を取得する際は、あまり運搬実績はないかもしれませんが、

ゴムくずを加えることをおすすめしています。

 

電気工事業と収集運搬品目

電気工事業者も、収集運搬業の許可取得を求められるケースが非常に多いです。

解体工事業者と異なり、電気工事業者は普通、ダンプは持っていません。

 

電気工事業者は、ハイエースや軽バンのようなバンに乗って仕事をしているでしょうから、

バンで運搬できる品目の許可取得がメインになります。

 

電気工事業者が必ず取得すべき品目は、以下の通りです。

  • 廃プラスチック類
  • 紙くず
  • 木くず
  • 繊維くず
  • ゴムくず
  • 金属くず
  • ガラスくず・コンクリートくず及び陶磁器くず
  • がれき類

 

建設系品目とは

一応、この8種類を「建設系品目」と呼んでいいのではないかと思います。

ゴムくずを除いた7品目を建設系品目と呼ぶ場合もあります。

建設業者の収集運搬業許可は、建設系品目が基本になります。

 

「がれきなんて運ばないよ」という声が聞こえてきそうですが、

たとえば電気工事の際に建築物のコンクリート部分に穴をあければ、

その際に排出されたコンクリのくずはがれき類に該当しています。

 

木造住宅から木くずが出たり、壁紙が紙くずだったり、

少量ながらも案外いろんな品目が排出されていたりするものなのです。

ゴムくず(天然ゴムくず)は、一部絶縁体に使用されているそうなので、

一緒に取得しておきましょう。

 

エアコン工事と収集運搬業許可

エアコン工事は、販売店である家電量販店の下請けで入るケースをかなり多く見てきました。

これまでも、私はここで何度も記事にしてきましたので、

ぜひそちらをご参照ください。

エアコン取付工事業者の許可更新時期

エアコン取付工事で家電量販店の下請に参入するのに必要な許可・登録

家電量販店も、コンプライアンスのために下請け業者に収集運搬業許可を求めています。

その際に、必要な品目は、おそらく以下の通りです。

  • 廃プラスチック類
  • 金属くず
  • ガラスくず・コンクリートくず及び陶磁器くず

 

家電量販店側としては、廃棄するエアコンの収集運搬を考えており、

そうなると品目は上記3品目で足るということになります。

 

しかし、当事務所では、

前述の電気工事業者に求められる品目と同一の品目での許可の取得を推奨しています。

エアコン工事の際に電気工事をすることもあるでしょうし、

エアコン工事業者が保有している車両も電気工事と同様に、

ハイエースみたいな車であることが多いですので、8品目での許可が取得できます。

 

土木工事業と収集運搬品目

土木工事の場合も、建設系8品目が基準になります。

  • 廃プラスチック類
  • 紙くず
  • 木くず
  • 繊維くず
  • ゴムくず
  • 金属くず
  • ガラスくず・コンクリートくず及び陶磁器くず
  • がれき類

実際は、土木工事の種類によっては、ここまでの品目は出ないかもしれませんが。

 

これに加えて、土木工事業の場合に必要になる可能性が高い品目は、以下の3つです。

  • 汚泥
  • 廃油
  • 廃アルカリ

汚泥に関しては、掘削汚泥やカッター汚泥などの建設汚泥が考えられます。

廃油は、建設現場で抜き取った重機の機械油などです。

廃アルカリは、アスファルトやコンクリートのカッター廃液です。

 

建設業者の産廃業許可更新手続忘れと講習受け忘れが非常に多い

建設業者は、自社のある都道府県の許可のみを有するケースが非常に多く、

そうなると、1度許可を取得すると、次の更新手続が5年後という話になってきます。

5年後の更新に合わせて、前もって更新講習会を受講していなければなりません。

 

このような業者は、許可取得から4年以上経ってから更新準備をしなければならず、

どうしてもうっかり忘れしやすくなってしまいます。

 

当事務所にご依頼いただいた顧客に関しては、

更新時期に合わせてご案内のお電話を差し上げていますが、

皆さん結構、更新も講習もすっかり忘れています。

どうしても忘れやすいところなので、気を付けましょう。

 

建設系マニフェストについて

産廃業に必須のマニフェストに関しては、建設系マニフェストというものが販売されています。

自社が元請として産業廃棄物を排出する際には、建設系マニフェストを利用するのが楽かもしれません。

もちろん、各都道府県の産業廃棄物協会で購入する普通のマニフェストを利用して、

建設系産業廃棄物を排出しても全く問題はありません。

 

以上、建設業者が取得すべき収集運搬業許可について解説してみました。

 

(河野)