産業廃棄物処理業の許可申請に関する講習会受講の注意

 

産業廃棄物処理業の許可を取得するためには、前もって講習会を受講しておかなければいけません。

この講習会には色々な種類があり、どれを受講すべきかを間違うと、

思わぬ不利益が生じることがあります。

今日は、この産廃の講習会の受講にあたって、想定される不利益について解説をします。

この記事の目次

  1. 講習会の種類は、新規・更新・新規特管・新規処分・更新処分
  2. 新規許可には新規、更新許可には更新講習の受講が一般的だが
  3. 更新講習の落とし穴と更新講習受講が適さない業態
  4. 特別管理産業廃棄物処理業に関する講習会を受講しておくべき業態
  5. 処分業に関する講習会は、予備的な受講は必要なし

 

講習会の種類は、新規・更新・新規特管・新規処分・更新処分

日本産業廃棄物処理振興センターという公益財団法人が、

産業廃棄物を取り扱う事業者向けに様々な講習会を開催しています。

 

産業廃棄物収集運搬業・処理業の営業許可を取得する場合、

許可申請に先立って、日本産業廃棄物処理振興センターが開催する

「産業廃棄物又は特別管理産業廃棄物処理業の許可申請に関する講習会」

という講習を受講し、修了試験に合格していなければなりません。

 

産廃業の許可を取得しようと思って講習会を調べてみると、

許可申請に関する講習会もいろんな種類があることに気付くと思います。

講習会の種類を列挙します。

  1. 収集運搬新規
  2. 収集運搬更新
  3. 特管収集運搬新規
  4. 処分新規
  5. 処分更新
  6. 上記の組み合わせ

色々ありますが、一体どれを受講すればいいのでしょう。

 

新規許可には新規、更新許可には更新講習の受講が一般的だが

単純に、許可を取得したければ、それに相当する講習会を受講する方が多いと思います。

たとえば、収集運搬の新規の許可を取得したければ、収集運搬新規の講習会を、

収集運搬の更新の許可を取得したければ、収集運搬の更新の講習会を受講すればいい、

というもとになります。

 

これは、確かにその通りでして、実際にはそのように講習会を受講すれば、

許可は問題なく取得できます。

これで終わってしまえば、

この記事はとても当たり前な常識的な事実を改めて解説しただけのものになってしまい、

執筆する意義はありません。

 

常識に囚われれしまうことによって、

経費や時間に無駄が生じてしまうことがあり、

さらにはビジネス上の機会損失を生むリスクを孕んでいる、

という恐ろしい話が、今日の記事のテーマになっていきます。

 

更新講習の落とし穴と更新講習受講が適さない業態

更新講習は、新規講習と比較して、

  • 試験科目が少ない
  • 講習日が短い
  • 講習会受講料が安い

などのメリットがあります。

 

許可の更新をするために講習を受講する場合、

新規講習より手軽な更新講習を受ける方が、合理的に見えてきます。

 

しかし、更新講習には、一般的にあまり知られてはいませんが、

デメリットも存在しているのです。

以下、更新講習の落とし穴です。

  • 修了証の有効期限が2年間の場合がある(新規なら必ず5年間)
  • 更新の講習のみの受講では新規の許可を申請できない場合がある

 

新規の講習会修了証の有効期限は必ず5年間ですので、

受講から5年間は、いつでも全ての許可の更新申請を行えます。

一方、更新の修了証の有効期限は、5年の場合もあれば、2年の場合のあります。

5年か2年かは、申請先都道府県によって異なるローカルルール。

 

もし、更新の講習会受講から2年半後に、ある県の許可を更新しようとする場合、

再度、更新の講習会を受講しなければならない可能性があるのです。

 

10年間というスパンで切り取ると、更新の講習会は2年おきに5回受講しなければ、

許可をいつでも更新できる状態を作れません。

一方、新規の講習会であれば、5年に一度、計2回の受講でいつでも更新できる状態を作ることができます。

 

収集運搬業の許可の件数が多く、更新時期が2年以上にわたって分散している場合、

講習会受講は、更新ではなく新規を受講することを検討すべきでしょう。

 

また、すでに他県で許可を有する業者が他県で収集運搬の新規許可を申請する場合、

更新の講習で認められる場合がありますが、

この場合はおそらく更新の修了証の有効期限は2年と解されることが多く、

なおかつ講習会修了者がかつて(5年以上前)新規の講習会を受講した経験を求められることもあると思います。

この点も、新規の講習会を受講している方が有利なのです。

 

以上の更新講習のデメリットから、

更新の講習会ではなくて、新規の講習を受けておくべき企業の業態・特徴をあげると、

以下の通りです。

  • 県をまたいで収集運搬を行い、複数の都道府県で許可を有している企業
  • 別の都道府県の収集運搬業許可を新規取得する必要がある仕事を請ける可能性がある企業
  • 長距離運送業者
  • 特殊な産廃に専門特化して広い商圏で収集運搬している企業

 

特別管理産業廃棄物処理業に関する講習会を受講しておくべき業態

普通産廃の収集運搬業許可を取得している業者で、

現在取引のある排出事業者の業種、収集運搬品目、運搬施設から判断して、

いつ特管の収集運搬の依頼が入ってきても不自然ではないという収集運搬業者があるとします。

 

たとえば、廃油を専門に運搬している収集運搬業者ですが、

特管の引火性廃油の収集運搬の依頼がいつ入ってもおかしくない。

或いは、廃酸・廃アルカリをすでに運搬しているが、

特管の腐食性廃酸・腐食性廃アルカリを運搬することになっても不思議ではない。

 

具体的な話が出るまでは、特管の許可を取得して予備的に準備しておくことは難しいでしょうが、

講習会に関しては、特管の講習を受けておくべきだといえます。

というのも、特管の収集運搬の具体的な話が来てから急いで特管の許可を取得するのであれば、

急げば2~3ヶ月で準備ができますが、

特管の講習会を含めて準備を開始していては、許可取得に4ヶ月~半年くらいかかってしまい、

仕事の受注が流れてしまう可能性が高いからです。

 

新規収集運搬の講習会は、2日間の日程。

新規特管収集運搬の講習会は、3日間の日程。

このたった1日の差が、向こう5年間のビジネスチャンスに差がついてくる可能性があるのです。

 

建廃を運んでいるような業者にとっては、

特管は廃石綿くらいしか問題になりません。

あなたの取引先の排出事業者は、特管物を排出する可能性はありませんか?

もし、可能性があるのであれば、できれば特管講習を受講しましょう。

 

処分業に関する講習会は、予備的な受講は必要なし

最後に、処分業の講習会について述べておきます。

処分業の修了証と収集運搬の修了証は別物で、

処分の修了証で収集運搬の許可申請はできませんし、

収集運搬の修了証で処分の許可申請もできません。

 

ほとんどの業者が、普通産廃の収集運搬過程を修了しているのですが、

上記で説明したように、特管収集運搬講習を予備的に受講するメリットはあります。

いつでも、特管新規の許可申請が準備できることが、

将来のビジネスチャンスにつながるということでした。

 

それでは、処分業も同様に、いつでも申請できるように、

処分業の講習会を受講しておいた方がいいのでしょうか?

 

これに対する回答は、

「処分業の講習は、前もって受講する必要はない」

です。

 

なぜかというと、処分業の新規許可を取得するには、

必ず事前協議が必要になるからです。

 

15条施設に該当せず、施設設置許可が不要な処分業であっても、

すぐに処分業許可申請、とはならず、

事前協議に最低数カ月の時間がかかります。

その間に、処分業の講習会を受講すれば、十分間に合います。

 

もちろん、前もって処分業の講習を受講しておいても、

全く問題はありません。

 

(河野)