収集運搬業許可申請における申請書副本・受理印の意義

産業廃棄物収集運搬業の許可申請に際しては、

申請書の正本とともに申請書の副本を作成します。

自治体の窓口に申請に行く際には、正本と副本を2部持参することになります。

今回は、この申請書副本の意味と意義について解説したいと思います。

この記事の目次

  1. 許可申請書の構造
  2. 許可申請の添付書類は多岐にわたる
  3. 申請書正本と申請書副本
  4. 許可更新の申請書副本は許可証の代わりの効力
  5. 申請書副本により許可内容の把握が可能

 

許可申請書の構造

まずは、産業廃棄物収集運搬業の許可申請書の構造についてお話ししたいと思います。

「構造」というと、なにやら難しいことのように感じるかもしれないですが、

とても簡単な話です。

 

産業廃棄物収集運搬業の許可申請書は、大きく分けて以下の2つに分かれます。

  1. 申請書
  2. 添付書類

申請書とは、都道府県知事または市長に対して、許可を申請する文書です。

一言でいえば、「許可を出してください」というお願い文書。

 

しかし、お願いされたらどんな業者にでも許可を出す、というわけではありません。

さまざまな法律上の要件等を備えている業者にのみ、許可を出すことになります。

しかし、申請を受理する役所では、

申請者が許可を出すに値する業者であるのかどうかを判断する材料を持っていません。

 

そこで手続上、

申請者が収集運搬業許可を出すに値する業者であるかどうかを判断させる材料を、

申請者自らが申請書に添付することにしています。

一言でいえば、許可を出すに値する業者であることの証明書類。

これを、添付書類といいます。

 

許可申請の添付書類は多岐にわたる

添付書類は、収集運搬業の場合でもかなりの枚数になります。

添付書類の中には、役所で取得したら添付するだけの公文書もありますが、

申請者自ら作成しなければならない文書もあります。

その代表的な公文書には、以下のようなものがあります。

  • 定款
  • 登記事項証明書
  • 役員株主の住民票の写し・登記されていないことの証明書
  • 納税証明書
  • 決算報告書(貸借対照表・損益計算書・)
  • 会社・土地の登記事項証明書
  • 車両写真・車検証
  • 事業計画書・財務計画書

他にもいろいろありますが、代表的なものを列挙ということで。

 

申請書正本と申請書副本

申請の際には、この申請書と添付書類をセットにして、

一冊の冊子上にして申請窓口に提出します。

この冊子のことを、申請書の正本といいます。

 

申請書正本だけで申請ができるかというと、多分できるのでしょうが、

実際には申請書正本だけで申請することはありません。

申請書正本とそっくりな申請書副本という冊子をもう一冊作って、

申請窓口に持って行きます。

(これにも例外があり、正・副・控と3部必要な自治体もあります)

 

申請書副本とは何なのか。

一言でいえば、申請書の申請者控えのことです。

役所に出した申請書とほぼ全く同じ冊子を作成して、

申請者控えを作ることになんの意味があるのでしょうか。

 

しかし、申請書副本は申請後もその後も、とても役に立つ書類なんです。

本人申請している業者の中には、

申請者控えである申請書副本を非常に軽視されている方もいらっしゃいますが、

とても大事な書類です。

 

申請書副本は許可申請受理の証拠

収集運搬の許可申請が受理されると、

ほとんどの自治体では、申請受理時に担当者が申請書副本の1面に受理印を押してくれます。

(広島県・千葉県などは例外的取り扱い)

 

この受理印が押された申請書副本の1面が、

収集運搬業許可申請が受理されたという証拠なのです。

 

申請者によっては、元請業者や取引業者に対して、

受理印のある申請書1面のコピーを提出することもあるかと思います。

 

許可更新の申請書副本は許可証の代わりの効力

この申請書副本の1面の受理印ですが、他にも大きな意味があります。

その一つが、更新許可申請における受理印。

更新許可申請は、現に生きている許可の期限までにしなければならず、

その期限までに更新許可申請がされていなければ、その許可は期限とともに失効します。

3月15日が許可期限であれば、3月15日までに更新許可申請をしなければなりません。

 

更新許可申請が受理されると、ただちに新しい許可が出るかといえば、そうではありません。

たとえば、3月15日が許可期限であり、3月10日に更新許可が受理されるとします。

更新許可申請でも、申請受理後に新しい許可証が発行されるまでは、1~2カ月かかることが多いです。

さて、3月16日になったら、新しい許可が出ていないこの許可はどうなるのでしょうか。

 

これに関しては、法律の規定があり、

許可期限が過ぎても、更新申請中の場合、新しい許可が出るか、不許可になるか、

そのときまでは、従来の許可が有効であると考えます。

つまり、3月16日以降も、旧許可証の有効性が継続しているということです。

 

ということで、更新申請中であれば、従来の許可が有効ですので、

更新期限を到来していても収集運搬業は可能なのです。

ところが、現実問題として、

許可期限を過ぎている収集運搬業の許可証だけを見せて収集運搬の仕事をしようとしても、

仕事を出してくれる排出業者なんてありません。

その許可証を見る限り、どう見ても許可期限が切れていて、許可が失効しているように見えるからです。

 

このとき、許可期限の切れた許可証に加えて、申請書副本の1面を添付することで、

今もこの許可が生きている、ということの証明になるのです。

受理印のある申請書副本の1面は、許可更新時には許可証の代わりになる非常に重要な書類です。

 

申請書副本により許可内容の把握が可能

もう一つ、申請書副本の重要な用途について述べておきます。

許可の有効期限は、通常5年間です。

この5年間の間に、許可の変更が必要になることもありますし、

5年経ったときに許可の更新手続が必要になります。

 

このような場合、変更届、変更許可申請、更新許可申請において、

従前の許可申請の内容はどのようなものであったのか、が重要になります。

従前の状態が分からなければ、何がどう変更になったのかの判断がつかないからです。

 

そんなことは許可証を見れば分かるんじゃないか、と思った方もいるかもしれません。

ところが、許可証に記載されている情報は許可申請書の内容のごく重要な一部のみであり、

許可申請の内容の詳細は読み取ることができません。

 

たとえば、収集運搬車両として登録されている車両のナンバープレートは、

一部の自治体を除くほとんどの自治体では許可証に記載されていません。

しかし、収集運搬車両を入れ替えると、変更届が必要になります。

 

 

(河野)