産業廃棄物の排出事業者(ゴミを捨てる企業)は、産業廃棄物の収集運搬の委託契約に際し、

収集運搬業者(ゴミを運ぶ企業)の産業廃棄物収集運搬業の許可証を確認しなければいけません。

廃棄物に対する責任は、廃棄物が適正処理され、また最終処分が終わるまで排出事業者が負い続けるからであり、

収集運搬業者に委託し産業廃棄物を引き渡したからといって、

排出事業者は産業廃棄物に関する責任を免れることはできません。

排出事業者は、それだけ重い責任を負っているわけです。

 

ところで、排出事業者が収集運搬業者の収集運搬業の許可証を確認するときに、

思わぬ落とし穴がある可能性があります。

それについて、今日は書いてみます。

 

福岡市で排出された汚泥を、北九州市の脱水施設に収集運搬する、というケースを考えてみます。

この場合、福岡県の収集運搬業の許可があれば、福岡県内全域での収集運搬が可能になります。

平成23年改正以降、福岡市と北九州市の収集運搬業許可は不要になりました。

福岡市→北九州市の収集運搬をしたいのであれば、福岡県の許可だけあればいいのは間違いありません。

 

では、排出事業者が収集運搬業者の許可証を確認するときに、

福岡県の許可証に「汚泥」と記載されておればそれで大丈夫なのか?

実は、そうではない場合が存在しているんです。

福岡県の収集運搬業許可証には、汚泥と書いてある。

なのに、福岡市から北九州市への汚泥の運搬ができないケース。

存在しています。

これは、平成23年改正の落とし穴だったのではないか、と私は思っています。

 

収集運搬業者が、福岡県の許可に加えて、福岡市や北九州市の収集運搬の許可を持っている場合。

それが、福岡県の許可があっても運搬できない場合に該当します。

平成23年改正以前に福岡市の許可を持っていた業者は、以後は福岡県の許可だけで県内全域で収集運搬できますが、

引き続き、福岡市の許可や北九州市の許可を持っているケースも考えられます。

その代表例が、積替え保管を含む収集運搬業許可を持っている場合。

 

積替保管に関しては、平成23年改正以降も、政令市に権限が残っており、

福岡市や北九州市の許可を取得しないと、市内で積替保管はできません。

この場合に、福岡市と北九州市の許可が福岡市の許可と併存し続けている状態になります。

そして、福岡市や北九州市では、収集運搬の品目の中に汚泥が欠けていると、

福岡県の許可品目の中に汚泥が入っていても、福岡市、北九州市では汚泥は運べません。

 

福岡市、北九州市で積替保管の許可を取得すると、

仮に汚泥は積替保管しないという許可であっても、

福岡市、北九州市の積替保管を含む収集運搬の許可により、福岡県の許可が政令市内に及ばなくなってしまうのです。

積替保管の許可だけで単独の許可が出れば、このような問題は生じないのでしょうが、

現行法上、「積替保管を含む収集運搬業許可」であり、あくまでも「積替保管業許可」ではありませんので。

 

平成23年改正により、産廃業者にとっては、合理化されてよくなった制度ですが、

この改正にはこんな問題をはらんでいたわけです。

 

最初の問に戻ります。

福岡市で排出された汚泥を、北九州市の脱水施設に収集運搬する場合は、

福岡県の汚泥の収集運搬業の許可証を確認するだけではだめで、

福岡市、北九州市の積替保管の許可がないかどうかまでチェックしないといけない、ということになります。

しかし、排出事業者としては、「許可があること」のチェックは許可証でできますが、

政令市の「許可がないこと」のチェックは大変難しいものです。

排出事業者としてコンプライアンスを重視する場合、排出事業者として一体なにを確認すべきなのか。

私も、よくわかりません。

改正によって掘られた法律の落とし穴なのではないでしょうか。

 

(河野)