産業廃棄物処理業の許可申請をする際には多くの場合、

役員の住民票と登記されていないことの証明書を添付します。

これを申請書に添付する必要がある理由のひとつが、

役員が欠格事由に該当していないことを証明するためです。

 

「役員が欠格事由」というのは、過去に特定の行政処分を受けていたり、

犯歴照会に引っかかったり、暴力団員等々ということになります。

会社の取締役に上記のような欠格事由に該当する人物がいる場合、

産廃業許可申請をしても残念ながら許可は出ず、不許可という処分が下ります。

 

許可申請書に住民票、登記されていないことの証明書を添付することの理由のひとつとして、

都道府県等に対して、申請者の役員の中に欠格事由該当者がいないことを審査してもらう、

という意味合いがあるのでしょう。

 

ところで、住民票、登記されていないことの証明書を添付するのは、

会社の役員=代表取締役・取締役・監査役等だけにとどまりません。

実は、5%以上の株式を保有する会社の株主も、

実際には住民票等の添付を求められているのです。

どこの都道府県等の申請の手引きを見ても、

5%以上の株式を有する株主の住所氏名を記載する様式があり、

記載した人の住民票等の添付を求めているのです。

 

ではなぜ、株主の住民票等の添付を求めているのか。

その根拠は、実は若干複雑なロジックの上に成り立っています。

今日はそのことを解説してみます。

 

廃掃法上、

「株主が欠格事由に該当しないこと」

と直接に記載した条文は存在しません。

ですので、「株主が欠格事由に該当すること」をもって、

産廃業許可申請を不許可にするということはできません。

 

株式会社という制度は、建前上は所有と経営が分離されたものであり、

経営者についての欠格事由を判断することで、

本来は産廃業の許可を出すかどうかが判断されます。

しかし、株式会社の本来の理念と反して、ほとんどの会社は所有と経営が分離されていません。

現実には、株主が会社の経営者であることがほとんどですし、

そうでない場合を想定すると、株主は雇われの役員に対して、

非常に強い権限を行使することが可能になります。

 

あるいは、「暴力団等が、雇われの誰かを役員として置く」という

典型的なフロント企業の構図があぶり出されてくるということも成り得えます。

このような会社に許可を与えることはできない、という価値判断が働くのは当然です。

 

実は、廃掃法の中に、役員以外の者に関しても欠格事由を認定できる条文があります。

欠格事由に関して規定した第7条5項4号二。

「取締役、執行役又はこれらに準ずる者と同等以上の支配力を有するものと認められるものを含む」

この、同等以上の支配力を有するものと認められる者こそが、

5%以上の株式を保有する株主である、という解釈をしているのです。

 

つまり、申請書に記載しなければならない5%以上の株式を有する者が欠格事由に該当する場合、

許可申請は、同等以上の支配力を有するものと認められる者が欠格事由に該当することをもって、

恐らく不許可になる、ということです。

 

繰り返しますが、廃掃法の中には

「5%以上の株式を有する者が欠格事由に該当すれば許可しない」

という文言は出てきません。

あくまでも条文には、

「同等以上の支配力を有するものと認められる者が欠格なら許可しない」と書いているだけです。

 

すると、

「5%以上の株式を有する者は、同等以上の支配力を有するものと認められる者である」

という解釈を間に挟まない限り、このロジックは成り立たないということになります。

現在の実務は、この解釈の上に成り立っているということになります。

 

では、この解釈は、そもそもどこから出されたものなのか?

 

この解釈は、環境省通知「行政処分の指針について」で示されたものなのです。

都道府県の実務の運用は、環境省の通知に概ね従っていくことになりますから、

5%以上の株主がいれば不許可処分になるだろう、ということがほぼ分かるわけです。

 

法律の条文というのは、必ずどこかに曖昧さを残すものでして、

その曖昧さを埋める作業を法解釈といいます。

余談ですが、法学部などで学ぶ法律学の多くが、この法解釈に関する学問です。

廃掃法にも、曖昧さを残す条文の解釈が必要になる場面が登場します。

その際に、環境省通知というのが非常に有力な解釈の指針となります。

法律と環境省通知によって、環境行政は運用されていると言っていいと思います。

 

(河野)