廃棄物処理業者が扱う廃棄物の中には、有価物と言われるものが混じっているものです。

有価物といえども、排出元の企業や個人はそれを捨てたわけですから、

「廃棄物じゃないのか?」と思われるかもしれません。

しかし、廃棄物を受け取った処理業者としては、その中の市場価値のあるものは販売することが認められます。

 

廃棄物にあたるか、有価物にあたるか、というのは、長い論争の歴史がありまして、

私も今、それを過去の事例に当たって調査している最中なのですが、

いくつかの基準を基に総合判断していくという風に考えられているようです。

少なくとも、「1円で買い取ったんだから廃棄物ではなく有価物だ」などといえるようなものではありません。

豆腐工場からおからが排出されたとして、おからが食べれるからと言って、有価物にあたる=産業廃棄物にあたらないとは言えません。

 

たとえば、木材チップやペットボトルが販売できるとしても、

それらの運搬コストが売価を上回っていれば、

それは有価性が認められず、廃棄物として扱うべきでしょう。

 

廃自動車から排出される廃バッテリーは、

産業廃棄物の品目でいえば、金属くず、廃プラスチック類、廃酸になります。

ところが、この廃酸が問題でして、バッテリーの中に入っている硫酸に関しては、

普通産廃ではなく、特管(特別管理産業廃棄物、腐食性廃酸)だと思います。

 

すると、廃バッテリーを運搬するのに、特別管理産業廃棄物収集運搬業の許可までが必要になるのか?

これは、不要と解されています。

特管どころか、そもそも普通産廃の収集運搬さえ不要という扱いです。

廃バッテリーは、現在はリサイクルされるために、有価で取引されています。

運搬コストよりも市場価格が高いために、有価物という扱いになるわけです。

 

ところで、もしも廃バッテリーの市場が何らかの理由で値崩れを起こし、

廃バッテリーの市場価格が下落すると、有価物から廃棄物に転落してしまう恐れもあります。

有価物か廃棄物かは、市場相場に左右される極めて相対的な概念でもあるのです。

 

廃掃法の主な立法趣旨は、不法投棄の防止にあります。

そうすると、市場価値のある有価物は、廃掃法の埒外ということになります。

しかし、そこは無法地帯なのかといえば、そうではありません。

有価物を取り扱おうと思えば、古物商の営業許可が必要になります。

 

結局のところ、廃棄物と有価物の判断が相対的なため、

産業廃棄物収集運搬業許可と古物商許可の2つの許可を取得する業者が多くなります。

その「物」が、廃棄物であろうと有価物であろうと、

2つの営業許可が取り扱えるようになるというわけです。

 

(河野)