最近、私の書いているこのサイトのブログ記事を読んでいただいた方から、
「一度、会社に来てほしい」
「事務所へ伺いたい」
と言ってもらえることが増えました。
有り難いです、ブロガー冥利に尽きます。
私はこのブログを、
廃棄物処理業の許可を必要としている事業者様に向けて書き続けています。
廃棄物リサイクルを専門とする廃棄物処理業者、
あるいは運送業者や建設業者で産業廃棄物の収集運搬業が必要な業者様が、
想定読者層です。
私がこのブログを書くに当たって、大切にしていることは、
廃棄物処理業界を、『経営ベース』の視座で捉える、ということです。
さかのぼること7~8年前くらいから、私は経営学に関する沢山の本を読みながら、
独学で経営を学んできました。
元々は、事務所経営(私の仕事)に生かすためにと考えてスタートした経営学の学びだったのですが、
気がつけば、廃棄物業界を経営学という視座から見てしまうようになっていました。
たとえば、経営学の一分野に、マーケティングという考え方があります。
ところで、廃棄物処理業者は、市場における”差別化”が本当に可能なのだろうか?
産業廃棄物処理業であれば、差別化がもしかしたら可能なのかもしれません。
特殊な技術を有する中間処理業者の中には、
差別化により高収益を達成している企業が、
私が知ってるだけでもたくさんあります。
ところが、一般廃棄物処理業の場合、差別化は途端に難しくなるような気がしています。
事業系一般廃棄物処理業の市場では、
消費者は、処分費が安いかどうかにしか興味がない、
ということが多々あります。
消費者が、家や車を買うときは、とにかく安ければいいとは考えません。
スーパーで晩御飯の牛肉を買うときも、晩酌のビールを買うときも、
とにかく安ければいいと考える人はいません。
高くても格好いい車や美味しい牛肉を買いたいと思ってしまいます。
ところが、廃棄物の処分費のことになると、値段以外は一切考慮しなくなるのが、
この廃棄物処理業の市場の特徴なのです。
消費者は、目の前のゴミがとにかく目の前からなくなってくれればいい。
その後のゴミの行き先なんてことには、全く興味がない。
この状態で、一体どうやってサービスを差別化してばいいのか…
せめて産業廃棄物なら、可能性はあります。
排出する企業にとって、不法投棄や不適正処理による企業イメージ悪化は大きいです。
処理業者が価格以外の要素でサービスを差別化する方法もあるかと思います。
『安心』という商品が、市場に流通し、値段が付くのです。
排出事業者には排出事業者責任があるために、処理業者の選定ミスが致命傷になる恐れがあります。
とくに、排出事業者の経営に対する意識が高ければ高いほど、
産廃処理を価格だけで業者選定することはないはずです。
そこに、本質的に困難であるとはいえども、廃棄物処理業に商品差別化が可能な余地があると思います。
ところがです。
一般廃棄物の処理に関する責任は、排出事業者ではなく、自治体が負っています。
ゴミを捨てる消費者からしてみれば、目の前のゴミがなくなれば、その後のことには興味がないのです。
やや余談ですが、一般廃棄物の処理には、マニフェストが必要ない理由はここにあります。
排出事業者責任を果たすためのツールとして、マニフェストがあるわけです。
こんな状態で、本当に一般廃棄物処理業の差別化が可能なのか。
さらに、もっと差別化が困難なのが、一般廃棄物の委託業務。
委託業務には、そもそも自由市場が存在しないので、
商品差別化を語る理由もないのかもしれませんが、
私が危惧しているのは、委託に企業風土が適合することで、
社内のイノベーティブな要素が根こそぎ奪われてしまうことにあるのではないか、ということです。
委託業務を行っている企業の多くは、事業系一般廃棄物も取り扱っているでしょうし、
産業廃棄物処理も取り扱っているのではないか、と予想します。
委託依存体質が染みついた企業が、本当に産業廃棄物処理の分野で差別化ができるのか。
委託業務の安定度が高ければ高いほど、それは困難になってくるように私は感じています。
廃棄物処理業界のイノベーションの芽は、委託という土壌の中で育つことはないのではないか。
企業にとって、収益の安定性は、
委託>事業系一廃>産廃
の順序でしょう。
現状、下手に委託や事業系一般廃棄物で会社がなんとかなっているから、
市場でのイノベーションではなく、既得権益保全のための活動へとたどり着いてしまう。
既得権に護られた業界というのは、一斉崩壊する可能性もはらんでいることを、
忘れてはなりません。
(河野)