産業廃棄物収集運搬業の主に事業計画の中に頻繁に登場する用語の中に、

「石綿含有産業廃棄物」というものがあります。

この石綿含有産業廃棄物、

おそらく今から10年くらい前から許可申請書によく登場しだしたんじゃないかと思いますが、

許可申請書作成時に、結構誤解を与える厄介な代物なんです。

 

まず読み方ですが、

「いしわたがんゆうさんぎょうはいきぶつ」

でも構いませんが、

「せきめんがんゆうさんぎょうはいきぶつ」

と呼ばれることの方が多いです。

両方聞きますので、たぶんどちらでもいいのでしょう。

 

石綿含有産業廃棄物の困ったところが、

その名前から、いわゆる飛散性アスベストと誤解を受けることが多いこと。

かつて、石綿含有産業廃棄物の積替保管計画の住民説明会で、

石綿含有産業廃棄物を保管する旨を説明したところ、

「それは危険だ!!」

と言って、アスベストによる塵肺の話をし出した方がいました。

 

ここで言う石綿含有産業廃棄物は、その飛散性のアスベストとはちょっと異なります。

名前が紛らわしいために、というか「石綿」という単語が非常に悪名高いために、

十把一からげに語られることもございますが、

飛散性アスベストと石綿含有は明確に異なります。

 

世の中でよく知られている飛散性アスベストは、産業廃棄物収集運搬業の許可では運搬できません。

産業廃棄物収集運搬業の許可で運搬できるのは、石綿含有産業廃棄物まで。

飛散性アスベストは、特別管理産業廃棄物の中の「廃石綿」の許可がないと運搬ができません。

特別管理産業廃棄物は、普通産廃よりも取り扱いに注意が必要な廃棄物で、

別に講習会を受講しなければ許可申請もできないというものです。

でも、「石綿含有」と言われると、

「アスベストかー!」

と反応される方の気持ちも、当然理解できます。

私もこの仕事をしていなかったら、石綿含有と廃石綿の区別なんてつかなかったでしょうから。

 

石綿含有産業廃棄物とはなにか?

これは、アスベストが微量に含まれている建築資材をいう場合がほとんどです。

石膏ボードやスレートなどが一般的。

近時の石膏ボードには、石綿は含有されていないようですが、

解体工事によって解体されていく建物は、昔建てたものですので、

石綿含有産業廃棄物はそれなりに排出されます。

 

「石綿含有産業廃棄物」という品目が具体的にあるわけではなく、

石綿を含有するがれき類、石綿を含有するコンクリートくずといった具合に、

各品目のオプションとして許可申請では取り扱われています。

なお、この品目と言いうのが不思議な地方ルールがあり、

紙くず(石綿含有産業廃棄物)や汚泥(石綿含有産業廃棄物)という記載をしている自治体が存在します。

「石綿含有汚泥」が一体どんなものなのか、私にはよく分かりません。

 

石綿含有産業廃棄物であるがれきは、他のがれきと区分して運ばないといけません。

これはなぜかというと、リサイクル過程がまるで異なるからです。

石綿含有産業廃棄物は、現在その多くを管理型に埋立処分しています。

一方、石綿を含まないがれきは破砕処理して路盤材などにリサイクルされるケースが多いと思います。

石綿が混合されると、せっかくリサイクルされるはずのがれきが埋立しかできなくなってしまいます。

 

当然ながら、石綿含有産業廃棄物は、破砕処理はできません。

そんなことをしてしまうと、含有している石綿が飛散流出してしまうことになるからです。

 

建設業を営んでいる企業から産業廃棄物収集運搬業許可申請を依頼されると、

当事務所では石綿を含む許可を取得することをお勧めしております。

ところが、申請先の都道府県内に管理型処分場がひとつもない、ということがあります。

この場合、「当該都道府県には石綿の処分能力がないということになります。

では、許可申請はどうするのか?

こういった問題に関しても、いずれこのブログで書いてみたいと思います。

 

(河野)