技術士の鎌田です。
3回目のコラムは「悪臭」のことについて話してみたいと思います。

生活環境影響調査の中でも最終処分場や焼却施設、し尿処理施設などの場合、施設の稼働に伴いこの「悪臭」について調査検討することが必要です。

悪臭を測定する方法は2通りあります。
1つは化学的な悪臭物質(悪臭防止法では特定悪臭物質と呼ばれ、現在、アンモニアや硫化水素などの22物質が指定されています)をそれぞれ定められた方法で分析するものです。
2つめは嗅覚測定法(昔は官能試験と言いました)といい、パネラーと呼ばれる人たちに適宜希釈した実際のサンプルの臭いを嗅いで判定するものです。

以前は法による悪臭規制は、前述の特定悪臭物質による濃度規制のみでしたが、実際の悪臭の苦情などが発生しているところでは、いろいろな成分の臭いが混ざり合っているため、限られた成分による規制手法に限界があったため法改正となりました。
その点、嗅覚測定法では、混ざり合った複合臭を直接判定するため、住民の悪臭に対する感覚と非常に良くマッチしており、現在は全国で広く採用されています。

これら二つの測定法について、私の経験談を少し記載します。
まず、特定悪臭物質の測定ですが、私が分析を主に行っていた当時は8物質(アンモニア、硫化水素、硫化メチル、二硫化メチル、メチルメルカプタン、アセトアルデヒド、トリメチルアミアン、スチレン)でした。
しかし、当然ながら悪臭を発生する物質はこれにとどまるわけは無く、いろいろ追加され現在の22物質に至りました。

これだけ言われても一般の方々には少しわかりにくいかもしれません。
たとえば、硫化水素は卵の腐ったような臭い(これは皆さんご存知でしょう)、メチルメルカプタンは腐った玉ねぎのような臭い、トリメチルアミンは腐った魚のような臭い、スチレンは都市ガスのような臭いです。悪臭物質ですから、全て強烈な臭いですが、イソ吉草酸などは、1週間くらい履いた靴下のような蒸れた臭いで、これもなかなか相当強烈です。
これらの悪臭物質をそれぞれ定められた測定方法で分析するのが特定悪臭物質による濃度規制です。

一方、嗅覚測定法は、予め基準臭を嗅いでもらい、普通の嗅覚を持ち、異常がないことを確認したパネラーを選定しておきます。
その上で、「三点比較式臭袋法」と呼ばれる方法で試験を行います。
この方法は、分かりやすく言えば、3つ1組の臭袋の中に1つだけ一定量のサンプルを注入し、各パネラーにどの臭袋にサンプルが入っているか当ててもらうものです。
初めは10倍程度からスタートし、順次希釈倍率を高くしていきます。
そうすると、初めは分かっていたパネラーも段々と不正解になっていきます。
人間の嗅覚で感知できなくなるまで希釈した時の希釈倍数を「臭気濃度」と言います。
この臭気濃度は数値的に大きな値となりえ、人間の嗅覚が対数尺度で感応することなどから、臭気濃度の対数の10倍した値を別に「臭気指数」と決め、この値で規制する手法を嗅覚測定法といいます。

自治体により、指定区域内を特定悪臭物質による濃度規制を行っているところや、県下全域を臭気指数による規制を行っているところなど、規制手法も様々であり、生活環境影響調査を行う場合も、その施設の立地する自治体の規制状況を十分確認し、環境保全目標を設定する必要があります。

鎌田