前回は、個人事業主が産業廃棄物処分業を営もうとする場合の注意点を書きました。

法人成、子供への事業の承継、そして事業の売却において、

とても大変なことになる可能性があると指摘いたしました。

 

産業廃棄物処理業の中でも、処分業者には、圧倒的に法人経営が多いと思いますが、

処分業開業にはある程度の規模の資本が必要なことに加え、

前回記事の内容が個人事業主の処分業への参入障壁になっているものと思われます。

 

一方、収集運搬業を個人事業で営んでいる方というのは、

処分業と比較すると結構多いです。

この個人事業を営んでいる収集運搬業者が、法人成をしたいとします。

どうしたらいいのでしょうか?

 

「許可証を株式に書き換えといて!」

と簡単におっしゃられることがありますが、個人と株式会社は全く別の人と扱われます。

つまり、株式会社で新規の許可を取得しなおさなければならない、ということなのです。

 

ちなみに、産業廃棄物収集運搬業だけでなく、建設業許可も古物商許可も、

解体工事業登録も、個人で有していた許認可関係の全てを新規で取得しなおしになります。

収集運搬の許可をたくさんお持ちの業者は、その全ての許可を再取得になりますので、

金銭的な負担も大きくなってしまいます。

このあたりが、法人化を踏みとどまるひとつの理由になるわけです。

 

法人での許可の再取得に当たって、講習会は新規の講習会を受けなければならないにか、

それとも更新の講習会でもいいのか?

法人の許可取得は新規申請ですので、新規の講習会を受けるのが本来の形です。

ここで、2つの「新規講習会を受講しなくても済む可能性」について述べてみます。

 

新規講習会を受講しなくていい可能性①

個人で許可を取得したときの講習会が新規講習で、

そのときより5年が経過していない場合

 

個人事業で収集運搬の許可を取得して5年以内に法人成するというケースがこれに相当します。

実務上も、結構あり得るケースです。

 

新規講習会を受講しなくていい可能性②

有効期間内に更新講習会を受講して、

なおかつ法人なりの場合には更新の講習会修了証でいいとの特例を認める申請

 

法人成の場合には、個人事業の実績を認め、

新規の講習会でなく更新の講習会で構わないという扱いをする自治体があります。

そういった自治体の場合は、新規の講習ではなく更新の講習で新規の許可を取得できるのです。

 

実務上も、更新を予定していたけど、やっぱり法人成しよう、と方向転換される方が、

この方法を使うことがときどきあります。

 

これの応用として、A県(特例あり)、B県(特例なし)の許可を持った個人事業主の法人なりについて。

A県では、特例を認めてくれるので、更新の講習会を受講しておれば、新規の許可申請が可能です。

一方B県は、新規の講習会を受講しなければ、新規の許可申請ができません。

 

ところが、まずA県で先に許可を取得すると、

B県の申請の際は、すでに他県で許可を有する業者として、

更新の修了証のみで新規の許可取得できます。

結局、A県もB県も、更新の修了証だけで法人成新規の許可が取得できるんです。

 

もちろん、A県の許可が出るまで待たなければB県の申請ができないので、

時間的ロスは生じます。

ただし、新規の講習会を受けても、修了証の到着までの時間的ロスは生まれますので、

臨機応変にどっちの方法を取るべきかを選択する必要があります。

 

(河野)