前回の記事では、

一日も早く収集運搬業の許可を取得するためにはどうしたらいいか?

をテーマにして、基本的なことを語りました。

私は、おそらくかなり多くの件数、

産業廃棄物収集運搬業の許可申請を出している行政書士の一人ですので、

きっとこのテーマに関しては、それなりに語れる行政書士だろうと思っています。

 

もちろん、全国には私以外にも、

年間100件以上の申請件数を誇る「産廃専門の行政書士」はいます。

100件申請する行政書士は、この道のプロです。

彼らも、一日でも早く収集運搬業の許可を取得するためには、

きっと私が語るのと同様の手法をとることでしょう。

 

前回の記事では、以下の点について書きました。

1 許可を急ごうと思えば、まず申請を急がないといけない

2 申請が受理されたのち、補正があれば速やかに行わんければならない

3 申請書に添付すべき書類の中で、講習会修了証だけはすぐには手に入らない

4 どうしても許可を急ぐ場合は、講習会修了者を社内に迎える方が早い

 

4に関して、堂々と主張する意見を私は他に聞いたことがありません。

しかし、建設業許可申請のために資格を持った従業員を雇用したり、

取締役に就任させることはよくあります。

それと前回私が述べた方法(上記4)は、本質的に何も変わりません。

名義貸しはダメですが、社内に有資格者を引っ張ってくることには何ら問題ありません。

 

この場合、申請までにかかる時間は役員変更登記があがるまでの、

およそ1週間まで圧縮できると思います。

政令使用人という方法ですと、さらに短くなりますが、

くれぐれも実体のない組織図を付けて許可申請をするようなことはしてはなりません。

 

前回までの具体的な方法論はここまででした。

この中で、私が前提にしていたことがひとつあります。

それは、

申請までの時間は縮減できるが、申請後、許可までの時間は縮減できない

ということ。

申請者(あるいは申請代理人行政書士)としてやるべきことをやった。

あとは、役所の審査待ち…

許可が出るまで待つしかない…のか…

 

実は、申請から許可までの期間を短縮できる方法、というのが存在しているのです。

この方法は、使用に際していくつかの条件が伴います。

使える場合と、使えない場合があるということ。

しかし、これがツボにハマったら、

2カ月かかるはずの許可が2週間で出てしまう、

などということさえ起きうるのです。

 

この方法、「先行許可」といいます。

先行許可制度がある自治体とない自治体が存在していますが、

先行許可制度がある自治体では、先行許可証を添付した申請が可能になります。

 

先行許可証とは、他の都道府県ですでに産廃業の許可を有している申請者が、

その許可証を提示したうえで行う許可申請です。

たとえば、すでに有している愛知県の許可証を提示したうえで、

岡山県の許可申請を行う、ということ。

 

先行許可証を添付すると、審査はどのように変化するんでしょうか?

 

一番の違いは、申請者または役員等の、

住民票、登記されていないことの証明書の添付が省略になるということ。

市役所、区役所で役員全員の住民票を取得したり、

法務局に行って登記されていないことの証明書を取ってきたりという手間が省けますので、

「そっか、その分早く許可が出るのか」

と思ったら間違いでして、ただそれだけではありません 。

 

実は、申請を受理した役所が許可を出すのに時間がかかる理由のひとつに、

役所から別の役所に照会をかけていることがあるんです。

 

たとえば、登記されていないことの証明書を添付しますので、

役員が成年被後見人、被保佐人などの「欠格者」、

すなわち産廃業を営んではいけないと法律に規定されているものでないことは証明できます。

申請書の添付書類から、それが明らかということです。

 

ところが、一部の欠格事由に関しては、自分で自分が欠格ではないと証明することができないんです。

例えば、犯歴に関してや、反社会的勢力でないか、破産者でないかなどは、

申請時に申請者が証明書類を添付するのではなく、

審査機関である行政庁が照会をかけているのです。

 

役所から役所への照会。

そう聞いただけでも、なんとなくとても時間がかかりそうですが、

実際に申請から許可が出るまでの間に占める「欠格照会」の期間というのは、

相当なもののようです。

その証拠に、申請先窓口で、許可はいつ出るのか?と尋ねると、

「欠格照会に時間がかかるんで・・・」

と毎回のように返ってきます。

 

この欠格照会という手続きを省く方法。

それが、さきほど述べた先行許可なんです。

先行許可を使えば、この欠格照会をスルーして許可証が出ますので、

1日でも早く許可を取得したい方は、ぜひ使ってくださいね、ということなんです。

 

と、魔法のような裏ワザ?、先行許可について書いてきましたが、

実は先行許可は自治体ごとに扱いにかなりのバラツキがある制度なんです。

そもそも、先行許可制度を認めない、という自治体もあります。

 

また、先行許可制度を認めている自治体でも、

必ずしも欠格照会をしないという自治体ばかりではありません。

先行許可を利用しても欠格照会を行う自治体では、

先行許可は公文書省略という意味合いくらいしか持たないこともあるでしょう。

申請前に、先行許可を使えば早くなるのかを、窓口に質問するといいでしょう。

 

最後に、先行許可証の恐ろしさについて。

先行許可証として利用できない許可証も存在しています。

前回、先行許可制度を利用して取得した許可証は、先行許可証としては使えません。

それが分かるように、実は産廃の許可証にはその旨書いてくれています。

それから、とある県は先行許可証として使用できる許可証の都道府県を限定しています。

●●県の許可証ならいいけど、〇〇県のはダメ、みたいなのがあったりします。

 

シリーズ2回目になる今回は、先行許可制度を中心に語ってみました。

この1日も早くシリーズ、次回も続けてみます。

皆さんの許可が1日も早く下りることを願ってます。

 

(河野)