十数年、行政書士という仕事を続けています。

その間に、いろんな同業者にお会いしました。

 

同業他社のことを悪く言うのは好きじゃないのですが、

あまりにも「ひどい」と思うことを時々みつけてしまうので、そのことを書いてみます。

 

なお、私がここに書く理由は、同業他社を悪くいうことで私をよく見せよう、とか、

そういう類の話ではありません。

どの業界でもいい加減な人はいるのかもしれませんが、

行政書士の「ひどさ」は、行政書士業という業界の特殊性に由来している、

というのが私の見立てです。

 

行政書士業の中でも、当事務所が行っている「許認可申請」。

顧客の依頼を受け、官公庁に申請書を提出し、許可を受ける、というのが仕事の流れです。

 

行政書士に依頼をしたけれど、ひどい目にあった、という話の多くは、

①仕事を頼んでも、いつまで経っても申請をしてもらえない

②申請はしたけれど、どこかで手続きがストップしたようで、いつまで経っても許可が出ない

④許可は出たけど、その許可では営業ができない

という話。

とくに、申請が出ない、許可が出ないというケースは、かなり多いようです。

 

行政書士に、産業廃棄物収集運搬業許可の申請を依頼したA社。

ところが、半年経ってもA社の申請が都道府県に申請されない。

なぜか?

 

この問題の本質こそが、行政書士業界の特殊性なんです。

忙しい、とか答えている人もいるようですが、たぶんそうではありません。

「さっぱりわからない・・・」

これが正解だと思います。

行政書士なら、手続きは分かるだろう?

書類作成のプロじゃないのか??

という声が聞こえてきそうですが、これが現実なんです。

 

ほとんどの行政書士は、産業廃棄物と一般廃棄物の違いを知りません。

パッカーやアームロールとは何かも知りません。

 

行政書士業務というのは、官公庁に提出する書類の作成なので、

日本中の官公庁の数だけ仕事があります。

あまりにも仕事が広範に散乱しすぎているせいで、初めて聞く話が多すぎて、

仕事を請けたところで、さっぱり分からないんです。

 

たとえば、入管業務や帰化申請という分野は、行政書士業務らしいです。

ところが、私はさっぱり分かりません。

どうやったら帰化できるのか、本当に何も知りません。

私は、廃棄物に関する仕事を専門にしているので、帰化申請は知らなくてもいいのです。

 

まず、帰化を本気で考えている方であれば、私に仕事を依頼してはいけません。

そして、私は帰化申請を受任してはいけません。素人なんですから。

私は自分で帰化申請の手続きをしなくても、周りに帰化申請を専門にしている行政書士がいますので、

そちらの行政書士を紹介します。

 

何も知らない状態で、行政書士は仕事を受任してはいけないんです。

なのに、「なんとかなるだろう」という甘い考えなのか、

全く分からない業務を受任してしまう行政書士の多いこと・・・

その結果、顧客にひどい迷惑をかけてしまうのです。

 

先日も、ある解体工事業者が産業廃棄物収集運搬業許可を取得したところ、

品目が足りない、と元請に指摘された、というケースがありました。

当事務所では、解体工事に必要な品目をお客さんに説明するとともに、

「最初から自分でやらずに当事務所に依頼してくれてたら、品目追加の変更許可申請なんて要らなかったのに・・・」

といったら、

「実は、行政書士に頼んだら、何カ月も時間がかかった上に、必要な品目が入ってなかったんだよ。」

という可哀想な話でした。

 

ある家電量販店の下請けに入っているリフォーム業者が、

「産廃の許可がないと工事ができないけれど、今の行政書士に頼んで半年経つのにまだ申請できてない・・・」

という嘆きの相談を持ってこられたことがあります。

「分かりました。では、その方が半年かかってできなかった申請を、うちは今週中に出しましょう。」

というと、お客さんは大変驚いていました。

 

今回の記事、同業者を悪くいう意味ではありません。

ただ、行政書士業界というのは、プロと素人が混在しているという意味で、

企業としては要注意しないといけない取引相手です。

くれぐれも、業務が全くわからない人に仕事を出すことのないようにしなければいけません。

また、行政書士としても、全く分からない仕事を安請け合いするようなことは、

許認可業務の場合、お客さんにひどい迷惑をかけますので、慎むべきです。

 

(河野)