「感染性廃棄物の収集運搬の許可を取るのは難しいの?」
電話での問い合わせを受けることが、しばしばあります。
結論をいえば、本当に運搬する気であれば、難しくはありません。
「できれば取得しておく」というレベルでは、取りにくいと思います。
今回は、感染性廃棄物の産廃収集運搬業許可について解説いたします。
この記事の目次 |
1 感染性廃棄物とはなにか?
まずは、感染性産業廃棄物の定義をみてみましょう。
感染性廃棄物とは、
医療関係機関等から生じ、人が感染し、
もしくは感染するおそれのある病原体が含まれ、
もしくは付着している廃棄物、またはこれらのおそれのある廃棄物
のことです。
具体例をみる方がイメージがわくと思いますので、
具体例を列挙しましょう。
- 注射針
- 輸血点滴セット
- ディスポーザル製品
- メス
- 破損したガラス製品等鋭利なもの
- 血液
- 血液が含まれるチューブ
具体例で、感染性廃棄物が何かがおおよそ分かってきたのではないでしょうか。
2 感染性廃棄物を収集運搬するために必要な許可
感染性廃棄物には、感染性産業廃棄物と感染性一般廃棄物がありますが、
ここでは感染性産業廃棄物に絞って、話をすすめます。
感染性廃棄物の収集運搬業には、特別管理産業廃棄物収集運搬業許可が必要です。
いわゆる特管と言われる許可です。
特管には、揮発性廃油等、腐食性の酸・アルカリ、特定有害産業廃棄物やPCB、廃石綿などがありますが、
感染性廃棄物はそのバリエーションのひとつということになります。
今回、はじめて感染性廃棄物を収集運搬しようとするのであれば、
特別管理産業廃棄物収集運搬業の新規許可申請をしなければなりません。
一方、すでに他の特管の許可(たとえばPCB)を持っているのであれば、
特別管理産業廃棄物収集運搬業の変更許可申請をすることになります。
3 感染性廃棄物を収集運搬するために必要な講習会修了証
感染性廃棄物の収集運搬業許可申請には、事前に講習会を受講している必要があります。
講習会には色々な種類がありますが、
新規の特別管理産業廃棄物収集運搬課程を修了している必要があります。
普通産廃の講習会が2日間のところ、特別管理産業廃棄物の講習は3日間行かなければなりません。
この過程を修了していれば、
感染性廃棄物でも特定有害でも廃石綿でも収集運搬の許可でも取れてしまいます。
4 感染性廃棄物を収集運搬するために必要な車両・容器
産業廃棄物の収集運搬業には、収集運搬車両または船舶が必ず必要になり、
また廃棄物の性状によっては容器が必要になります。
感染性廃棄物の収集運搬に関しては、普通産廃の収集運搬と比較して、
はるかに高い水準で車両と容器を備えていることを求められます。
私は、感染性廃棄物の収集運搬の許可申請を日本全国全ての役所に出したわけではありませんが、
おそらくどこの自治体でも、以下の点について求められることになると思います。
- 感染性廃棄物の密閉
- 感染性廃棄物の腐敗防止措置=冷蔵する
収集運搬の最中、
どうやって感染性廃棄物を密閉して、どうやって感染性廃棄物を冷蔵するのか。
ここで、車両と容器が問題になってくるわけです。
まず、冷蔵して密閉するのに適した車両として、保冷車(または冷凍・冷蔵車)というものが存在します。
原則として、感染性廃棄物の収集運搬には保冷車が必要であると考えてください。
この保冷車の車両価格が高いので、別の運搬方法がないか、過去にいろいろ試みたことがあります。
特管許可が取れて、その許可を基に契約が取れれば、保冷車を購入するつもりだけれども、
契約が取れるかどうか未定の段階で、保冷車まで設備投資するのは難しい、ということでした。
実際に私が保冷車なしで申請した事例では、
容器を2重にした上で、ドライアイスで保冷する事業計画を立てました。
このドライアイスでの感染性廃棄物の運搬は、自治体との協議が必要になりますし、
保冷車がないとダメ、と言われる可能性もあります。
感染性廃棄物の運搬容器には、バイオハザードボックスを使用します。
バイオハザードボックスには、バイオハザードマークが表示されており、
マークは廃棄物の種類により3種類の色分けがされています。
バイオハザードボックスは安い物ですので、感染性廃棄物の収集運搬の申請に際して、
購入していただければと思います。
こんなもの一体どこに売ってるのか、私も気になって調べてみたら、
Amazonでも購入できそうです。
5 感染性廃棄物の収集運搬業許可が取りにくいとすればその理由
この記事の冒頭で私は、感染性廃棄物の収集運搬業許可の取得難易度について、
本当に運搬する気であれば、難しくはなく、
「できれば取得しておく」というレベルでは、取りにくいと申しました。
その理由は、ここまでの記事を読んでいただいた方であれば、
もうご理解いただけたと思います。
感染性廃棄物の収集運搬業許可において最大の障壁は、
保冷車の保有なんです。
保冷車の保有さえできれば、感染性廃棄物の収集運搬業許可は、決して難しくはありません。
一方、保冷車が準備できないとなると、許可の取得は途端に難しくなってしまうのです。
6 感染性廃棄物の収集運搬業の将来的展望
感染性廃棄物の収集運搬は、
保冷車を保有した上で特別管理産業廃棄物の許可を有さねばならないので、
普通産廃よりも参入できる業者が相対的にかなり少なく、
結果的に市場競争に晒されにくい特性があると思います。
排出事業者が責任を負う廃棄物処分において、
病院等の医療機関が顧客になるというのは、とても強みになると思います。
無茶苦茶な安い処分費を言ってくるような病院というのは、
少なくとも建廃を排出する建設業者よりかははるかに少ないでしょう。
それから、公立病院の入札情報などをチェックしていると、
特管の収集運搬の物件が出ていたりします。
こういった案件の獲得も、廃棄物処理業者の経営の安定に繋がるでしょう。
(河野)
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