「家庭ごみの処分に無許可の回収業者を利用しないでください!」
これは、広島市のウェブサイトに表記されいる民間向けの注意文書です。
環境省や地方自治体がここ10年くらい啓蒙活動を続けているので、
すっかり頻繁に目にする警告文です。
無許可業者というのは、一般廃棄物収集運搬業許可を持っていない業者のことを指します。
無許可業者に一般廃棄物の収集運搬を委託しないで、というのがこの注意文書の趣旨。
ところが、世間には無許可業者が一般廃棄物をたくさん運搬している、というのも実情。
一般廃棄物収集運搬業の許可がなくても、別の許可や資格を無許可業者は名乗っていると、
広島市のウェブサイトには書いています。
その許可や資格に該当するのが、以下の3つ。
1 産業廃棄物収集運搬業許可
産業廃棄物収集運搬業では、原則として一般廃棄物を収集運搬することはできません。
産業廃棄物とは、事業活動(商売のようなものと思ってください)により排出される廃棄物のうち、特定のもの。
一般家庭から排出される廃棄物は、事業活動に伴って排出されるものとは言えません。
ですので、産業廃棄物収集運搬業で家庭から排出される一般廃棄物を運搬することはできないことになります。
これには、例外もあります。
家電リサイクル法に定めのある4品目、具体的にはエアコン、テレビ、冷蔵庫・冷凍庫、洗濯機・衣類乾燥機に関しては、
相互乗入制度というのを法は認めており、
産業廃棄物収集運搬業許可があれば、家庭から出るテレビ=廃家電を収集運搬できます。
もちろんこれは、製造メーカーが用意しているリサイクル過程に乗せて廃家電を処分することが要件ですが。
街の家電量販店のロゴを貼った車両が、新品のテレビと引き換えに古いテレビを持って帰ることがあると思います。
その車両には、「産業廃棄物収集運搬車」のステッカーが貼られているはずで、
これが相互乗入(一般家庭から排出される廃棄物を産業廃棄物収集運搬業許可で運搬できる場合)の実例です。
2 古物商許可
この許可は警察が出すものなのですが、廃棄物収集運搬業許可を持っている業者の多くが取得しています。
古物=有価物ということになりますが、廃棄物と有価物の関係は実は明確な線引きが難しく、
極めて相対的な関係ということになります。
総合判断説という考え方を持ち出すのですが、総合判断というのは明確な基準がないということを換言しているとも言えます。
ゴミと思って捨てようとしている人の主観は問題にならず、
客観的にしかも曖昧なものを残しながら、廃棄物なのか有価物なのかが決定されることになります。
そういった事情で、古物商許可と廃棄物収集運搬業の許可を両方取得する業者が多いのです。
家庭から排出されるものが、捨てる人がゴミだと思いこんでいても、
客観的に市場価値があれば、古物商許可で買取り、ということが行われても違法ではありません。
ただし、客観的に市場価値がないのにもかかわらず、1円買取りとか0円買取りとかは、無理筋です。
3 遺品整理士
産業廃棄物収集運搬業、古物商許可と同列に「遺品整理士」が登場してくるあたり、
行政側も遺品整理士資格を無視できなくなってきたのかもしれません。
遺品整理士は、一般社団法人が認定する民間資格で、
法的には「遺品整理士でなければできないこと」というのは、現時点では何ひとつありません。
遺品整理士の一般社団法人を立ち上げた方の著作を私も読んだことがありますが、
高い志を持っているのは伝わりました。
遺品整理士資格が社会に、そして政府に認められるためには、
その活動が違法行為に該当しないことが大前提でして、
一般廃棄物の処理はまさしくその試金石になっていると私は感じています。
遺品整理士が一般廃棄物の運搬という廃掃法違反を行っているようであれば、
遺品整理士の未来は暗いものになると思います。
しかし、完全に法律に従ったまま、
つまり一般廃棄物の収集運搬を許可業者に外注して、
本当に遺品整理業が事業として成り立つのかどうか。
つまり、利益が残るのかどうか、私には疑問が残ります。
既存の一般廃棄物収集運搬業許可業者が、なかなか遺品整理業への業務拡大ができていない現状。
しかし、市場のニーズはおそらくこれから膨れ上がります。
遺品整理業限定の一般廃棄物収集運搬業の新規許可(帯広市が初)は、
もしかしたら、その回答なのかもしれません。
(河野)