経営改善計画・収支計画・財務計画について

産業廃棄物処理業の許可申請の際に、ときどき求められる書類の中に、

「経営改善計画書」あるいは「財務計画書」というものがあります。

今回は、経理的基礎を証明するこれらの書類について執筆します。

この記事の目次

  1. 経営改善計画書等を全く求めない自治体もある
  2. 経営改善計画書等が求められる場合
  3. 廃棄物処理業にはなぜ経理的基礎が求められるのか
  4. 行政が業者の経理的基礎をチェックする手段が経営改善計画書等
  5. 中小企業診断士の経営診断書が必要なこともある
  6. 経営改善計画書の作成手順
  7. 現状の問題点がどこにあるのかとその発生原因の特定
  8. 経常利益マイナスの改善
  9. 債務超過解消
  10. 未来を予測する収支計画書
  11. 収支計画書作成にはExcelが圧倒的にラク

 

経営改善計画書等を全く求めない自治体もある

産業廃棄物処理業の許可を取得するための要件として、

経理的基礎というものがあります。

 

経理的基礎を満たしていないと判定される場合に、

経営改善計画書や収支計画書が必要になる場合があります。

これが経理的基礎に関する追加資料です。

 

ただし、自治体によってはよほど悪い決算書でない限り、

そもそも経理的基礎に関する追加資料を求めない場合もあります。

とくに積替保管を含まない収集運搬業許可は、

経理的基礎の認定は比較的甘めです。

 

経営改善計画書等が求められる場合

収集運搬業の許可申請ですと、主に以下の条件に該当する場合に自治体によっては必要になります。

  1. 債務超過
  2. 利益が出ていない
  3. 事業開始後、3期経ってない

 

ざっと極めてアバウトに書きました。

各自治体によって、求める基準が違うので、

上記1~3を詳細にしたような基準を各自治体がそれぞれ設定していると思ってください。

個人事業主でしたら、ほかに所得税の納税があるかどうかも問われるかもしれません。

 

廃棄物処理業にはなぜ経理的基礎が求められるのか

産業廃棄物処理業というのは、他の仕事と異なる点があります。

通常の仕事は、商品と代金を引き換えることで成立していますが、

産廃処理業は、産廃と代金を引き換えるのではなく、

産廃と代金がセットになって取引がなされるのです。

 

「この産廃をこの代金で処理してね」

と言いながら、産廃と代金をセットにして引き渡すので、

処理業者側には不法投棄の強いインセンティブが働くことになります。

 

もちろん、廃掃法違反には厳しい罰則がありますが、

金銭的にひっ迫した処理業者なら、背に腹は代えられないと言わんばかりに、

不法投棄に走るというシナリオが想定されます。

 

行政が業者の経理的基礎をチェックする手段が経営改善計画書等

そこで、産廃処理業を営む企業には、許可を与えたり更新したりする段階で、

行政が財務状況をチェックしましょう、ということになるわけです。

その際に、この記事の上の方に書いた3つの条件に該当するような企業は、

別途書類の提出を求めましょう、ということに。

その書類こそが、経営改善計画書、財務計画書と言われるものです。

 

中小企業診断士の経営診断書が必要なこともある

なお、経営改善計画書の作成は、

申請者がする(あるいは行政書士が代理で作成する)ということになります。

ところが、自治体によっては、経営改善計画書ではなくて「経営診断書」という書類を求められることも。

 

経営診断書というのは、中小企業診断士という国家資格者が作成する必要があります。

経営診断書を求められる都道府県は色々ありますが、

愛知県、岐阜県、静岡県の3県は経営診断書の件数が多いと思います。

 

経営改善計画書の作成手順

ここでは経営改善計画書の作成の注意点を簡単に書いたみたいと思います。

 

現状の問題点がどこにあるのかとその発生原因の特定

経営改善計画書では、まず経営の問題点の指摘をすることになります。

債務超過なのか、自己資本比率が低いのか、経常利益がマイナスなのか、

どこに問題があるのかを呈示します。

 

さらに、その問題点が生じた理由を、過去の決算書にさかのぼって説明することになります。

次に、その問題点をどのように解決するのか、を具体的に説明する必要があります。

 

繰り返します。

  • 問題点はどこにあるのか?
  • その問題をどのように解決するのか?

 

 

 

経常利益マイナスの改善

経常利益がマイナスなのであればその解決は、

  • 売上を伸ばす
  • 売上原価を減らす
  • 販売費及び一般管理費を削減する
  • 上記の合わせ技を用いる

のいずれかになると思います。

そのための具体的な方法、すなわち

  • 売上の増やし方
  • 売上原価の減らし方、
  • 販管費の削減方法

を説明するのが、経営改善計画書なのです。

 

自己資本比率の改善

自己資本比率を上げるには、貸借対照表の

  • 純資産の割合を上げる
  • 負債の額を減らす

ということです。

そのためには、

  • 当期純利益がプラスの決算を繰り返し、繰越利益剰余金を積み上げる
  • 増資、新株発行
  • 役員借入金があれば役員が債権放棄

などの方法があります。

 

債務超過解消

債務超過は、自己資本比率がマイナスということですので、

債務超過を解消するには、自己資本比率をマイナスからプラスに引き上げればいいだけです。

上記の方法で、自己資本比率を上げるしか対策はありません。

 

未来を予測する収支計画書

それを基にして、未来5年間の収支計画書を作成することになります。

収支計画書というのは、会社の決算書のうち損益計算書を未来にわたって予測で作成したものです。

さらに、貸借対照表まで予測する場合もあります。

 

収支計画書作成にはExcelが圧倒的にラク

これらの収支計画書の作成においては、Excelが重宝します。

決算書もExcelもよく分からなくて、

どうしても、自社で収支計画書の作成が難しい、ということで、

なおかつ行政書士に依頼せずに産廃業許可申請書を作成したい、ということであれば、

収支計画書に関しては、顧問税理士に相談してみてはいかがでしょうか。

 

実は、当事務所に新しい職員が入ってきて、最初に課題になるのが、

この収支計画書です。

決算書をちょっと読めないと収支計画も書けないので、

決算書の理解を社員教育に取り込んでいます。

私もこの仕事をしながら、ずいぶんと決算書に詳しくなりました。

 

(河野)