先日、行政書士向けのシステムを作成しているエンジニアとお会いしました。

司法書士事務所や税理士事務所、社会保険労務士事務所では、業務システムはしっかりと普及しています。

ところが、行政書士業務となると、システムの普及率は極めて低いはず。

なぜでしょう。

 

この回答は、他士業と比較した際の行政書士業務の特殊性にあるのではないかと私は思っています。

行政書士と一言で言っても、建設業許可申請、風俗営業許可申請、帰化申請、遺言相続、農地転用とまあ、

非常に幅が広い。

私は、産業廃棄物処理業に専門特化していますが、専門外のこと、たとえば帰化申請のことを聞かれても、

さっぱり答えられません。

同じように、遺言相続を専門としている行政書士に産業廃棄物処理業のことを聞いても、全く答えられないでしょう。

 

行政書士というのは、同じ看板を掲げながら、扱っている商品がまるで違う。

これが、他士業と比較した行政書士業の特殊性だと私は感じています。

行政書士業の特徴である広範な業務範囲をカバーしたシステムが作れるのかというと、

たぶん難しいと思います。

ここが、行政書士業がシステムに馴染まない理由なのではないかと思うのです。

 

行政書士業務の中の、一分野を切り取ったシステムは存在します。

当事務所でも、一部の業務に関してはいくつかの市販システムを導入しています。

しかし、当事務所の業務量のほとんどを占める産業廃棄物収集運搬業、産業廃棄物処分業の許可申請に関しては、

市販のシステムを使用していません。

関東方面のみを対応した産廃の市販のシステムは存在しているようですが、

当事務所では使っていません。

 

しかし、産廃業に関しては膨大な量の業務を抱える当事務所では、

とてもじゃないですが、管理システムなしには業務管理はできません。

そこで、当事務所では自社開発のシステムを利用しています。

もちろん、産廃業許可申請の全てに対応したシステムひとつで全ての処理ができるのが理想ですが、

それはさすがに難しい。

そこで、産廃業許可申請業務の作業のいくつかを分断し、AccessやExcelVBAを利用し、

自前のシステムを作っています。

 

行政書士業務システムを作成しているSEに、当事務所で使用しているいくつかのシステムを見ていただきました。

生々しい業務の実体を見ていただきましたので、

きっと私たちの苦悩を反映した行政書士業務システムが未来に生まれるであろうことを期待しています。

 

当事務所で開発した、産廃業務の管理システムは、「他の行政書士に販売できるんではないか?」と言われたことがあります。

しかし、産廃業務であれば、年間に数十件の申請であれば、システムなどなしで、エクセルシートで十分管理できると思います。

当事務所のシステム化が進んだのは、産廃だけで年間200件を超えてきたころ(たしか2010年頃)だと思います。

このままでは身動きが取れなくなる、と思い、システムの自社開発をスタートさせました。

もちろん、本物のシステムエンジニアが作るようなものは、素人の私たちにはできません。

しかし、当事務所は産廃業務を誰よりも知りつくしているはずなので、本当に必要なシンプルなシステムが作成できます。

現場の声がプロのシステムエンジニアに届けば、との思いで、今回はお話しさせていただきました。

 

なお、行政書士事務所でも業界大手の事務所になると、システム開発部門を持っていたり、別会社でシステム屋を持っていたりします。

行政書士業務にとって、情報処理技術が今後は必須になってくるかと思います。

情報処理技術こそが、行政書士の持続的競争優位の源泉になってくるはず。

 

(河野)