技術士の鎌田です。

 

今回は弊社の環境部門でも最も力を入れている
「生活環境影響調査」と「条例アセスメント」の
違いについて書きたいと思います。

 

このコラムを読んで頂いている多くの皆さんは
生活環境影響調査についてはよくご存知だろうと思います。
ご承知のように廃棄物処理法の規定で
廃棄物処理施設の設置の際などに義務付けされているものです。

 

一方、いわゆる「条例アセスメント」については、
都道府県などの自治体の条例で一定規模以上の対象事業について、
環境アセスメント調査が義務付けされているものです。

 

対象事業は広く建設事業全般におよび、
道路建設、河川工事、住宅団地建設、工業団地建設、
土地区画整理事業、ゴルフ場などの
レクリエーション施設建設などいろいろあります。
私たちが最も身近に接する機会が多い廃棄物処理に関するものについては、
最終処分場、ごみ焼却施設などが含まれていることが多いです。

 

条例アセスメントのさらに上位に環境影響評価法という法律があり、
こちらは条例アセスメントよりも
さらに規模が大きいものが対象となっています。

 

条例アセスメントの場合、文字通り、
自治体ごとにその地域の実情にあった事業や規模の設定をしています。
そのため、こちらの県では対象になった事業がまた違う県では
対象とはなっていないものもあります。
道路建設などは建設事業の根幹となりますので、
どの自治体も対象事業として定められていますが、
廃棄物処理施設の建設などの場合は、少々異なるケースがあります。

 

具体例として、弊社の本社事務所がある広島を例にあげてご説明します。

 

まず、広島県の場合は、
ごみ焼却施設、し尿処理施設、産業廃棄物焼却施設、最終処分場が
それぞれの規模要件ごとに対象事業となっています。
しかし、同じ広島でも広島市の場合は、少し表現が異なり
廃棄物焼却施設、し尿処理施設、最終処分場がそれぞれ対象となっています。

 

最終処分場のケースでは、
県は埋め立て面積10ha以上を対象としていますが、
市は設置の場合は3ha以上、
変更の場合は3ha以上の増加が対象となっています。
このように県では比較的大規模な事業を対象としているのに対して
市ではより小規模な事業も対象としているところが大きく異なります。

 

少し話しはそれますが、このように自治体によって同じ事業であっても
アセスメントの必要性が異なり、
事業スケジュールや事業費にも大きく影響することになります。

 

そうすると当然ながら、
広島市以外の県内を視野に入れて、
しかも10haに満たない規模の事業を進めようとする発想が出てきます。
当然といえば当然です。
このような考え方は、国内のどこでも起こりうることで、
廃棄物処理施設に限った話しではありません。

 

ただ、経験的にどのような場所であっても環境対策は必須であり、
意識の低い事業者は地元とのいろいろな話し合いや
調整に難航する場合が多い気がします。

 

次に調査項目の話しをします。

 

生活環境影響調査は、ご承知のようにミニアセスや
生活アセスなどと呼ばれる場合があり、
条例アセスメントのようなフルアセスの規模を小さくしたものといえます。

 

生活環境影響調査の項目はご承知のように、
大気、騒音、振動、悪臭、水質、地下水となり、
環境省の定めた指針に基づき調査予測評価項目を選定します。

 

焼却施設と最終処分場は現地調査や予測評価の難易度が高く、
地元との調整なども含めると
他の破砕処理施設などの調査と比較して時間を要しますが、
それらが円滑に進めば1~2年で終了することが可能です。

 

一方、条例アセスメントの場合は、
生活環境影響調査とは調査項目が大きく異なり、
広島県環境影響評価条例では、
大気、騒音、振動、悪臭、低周波空気振動、風害、水質、底質、
地下水、潮流、水象、地形・地質、地盤、土壌、文化財、
日照阻害、光害、動物、植物、生態系、景観、
人と自然との触れ合い活動の場、廃棄物、温室効果ガス
などとなっており、一目瞭然、項目数が全く異なります。

 

もちろん事業の内容や場所により、
この中から必要な項目を調査予測評価することになりますが、
潮流などを除き、経験的にはほとんど調査の
必要性があると考えた方が良いでしょう。

 

水田などの耕作地や市街地の場合であっても
動植物調査は欠かせません。
山林原野の場合とはもちろん結果は異なりますが、
水田であれば耕作放棄地や畦畔、
市街地であれば点在する緑地などに生息生育する
動植物を調査する必要があります。

 

これらは、同時にアセスメントに要する時間にも大きく影響し、
現在は少なく見ても約3年間は必要とされています。
アセスメント着手前にかなり綿密に地域概況を捉え、
それらを考慮したうえで計画設計を進めているような
確かな事業であれば期間の短縮は可能かもしれませんが、
現実的にはかなり難しいことだと思います。

 

さらに、計画地にオオタカなどの猛禽類が確認されたよう場合は、
現地調査は最低でも2繁殖期行う必要があり、
場合によっては3繁殖期以上必要とされるケースもあり、
さらに工程が伸びることになりえます。

 

生活環境影響調査の場合は、開始時は自治体によって少々異なりますが、
認可申請の適切なポイントで調査に入ることが可能です。
しかし、条例アセスの場合は、計画設計がある程度あったとしても
調査予測評価をどんどん進めて事業者サイドで
準備書(いわゆる報告書案のようなもの)などにまとめました、
というわけにはいきません。

 

調査予測評価に入る前に
どのような地域で、どのような調査項目を、どのような方法で
調査予測評価するかについてまとめた方法書をまずは作成し、
関係地域において説明会や縦覧を行い、
意見などが出た場合はそれらを方法書に
反映させるようなステップがあります。

 

この段階を経て、やっと現地調査をスタートさせることができます。
もっとも、方法書作成段階で、
すでに現地の状況をある程度把握しておく必要性があることから、
現地調査は方法書段階でも一定程度以上行うことが一般的だろうと思います。

 

また、生活環境影響調査と異なる点として、事後調査も必須なことです。
評価書(いわゆる最終報告書のことです)の縦覧が終了した段階で
事業(工事)に着手することは可能ですが、
その際に工事中、供用後の調査が求められます。
これは、アセスメントは、
いくら最新の知見をもってしても不確実性を伴うため、
実際の現場においてその後、確認調査するという位置づけです。

 

ここまで長々と書きましたが、
条例アセスは結構ハードルが高いことをご理解頂けたかと思います。

 

最後になりましたが、
私が環境アセスメントを始めたのはバブル最盛の頃でした。
あちらこちらでリゾート開発が目白押しでした。
環境の技術者としては、
山林がどんどん開発されていくことに抵抗もありましたが、
自分のできる環境調査や保全対策の検討などを事業者に伝え、
できる限り環境に配慮した事業になるよう微力ながら努めました。

 

当時は、自治体にもよりますが、
今のように条例の整備もままならず、
役所の担当者が一人で次から次へと届く
環境影響評価準備書(いわゆる報告書案)などを
終日読み審査やチェックをしているような状況でした。
担当者と会うたびに疲労困憊といった様子がかなり感じられたものです。

 

今では条例もきちっと整備され、
役所担当者も勉強し経験を踏んできていますので、
相応な体制となり、技術的にも厳しい指摘などあることもしばしばです。

 

事業者としては、
このように生活環境影響調査か条例アセスの対象となるかによって、
手続き、調査内容、事業費など大きく異なるため、
立地場所、事業規模、事業内容やスケジュールを考える場合は、
このようなことを予め十分に把握しておくことが大変重要です。

 

技術士(総合技術監理部門・建設部門)
鎌田真裕