技術士の鎌田です。

 

 

 

今回は、地理情報システムについて、私のわかる範囲で、

日常の使い方などについて書いてみようと思います。

地理情報システムは、

一般的には「Geographic Information System

の頭文字を略してGIS(ジーアイエス)といいます。

 

 

 

これまで公害問題や産業廃棄物、生活環境影響調査などについて、いろいろ書いてきましたが、

なぜこんなシステムのことをいまさら言うのか? と思うでしょう。

 

 

 

GISは、地図で表現できるものであれば、無限といっても良いかもしれませんが、

様々な分野で活用されています。

私が日常携わっている環境アセスメントや生活環境影響調査についても同様です。

 

 

 

環境アセスメントをする際、大気汚染や騒音振動、水質などの生活環境、

動植物、地形地質などの自然環境、人口・集落、公共施設の分布状況などの社会環境、

また関係法規制などについて、多方面の要素を分析や表示、あるいは解析を行う必要があります。

具体的にお話ししましょう。

 

 

 

ある市町村で一般廃棄物処理施設(ごみ焼却施設など)を

特定の地区に設置を計画しているとします。

安易に廃棄物処理施設の計画設計をどんどん進め、

建設してしまうようなことは間違ってもできません。

 

 

 

私が日常行っている環境アセスメント・環境影響評価あるいは生活環境影響調査を実施し、

周辺環境への影響を調査予測評価し、問題がある場合は必要な環境保全対策を講じ、

地元住民などの関係者に丁寧に説明し、そのうえで計画を進め、建設に至ります。

 

 

 

この周辺環境への影響を調査予測評価する際に地域の状況について、

様々な角度から情報収集し、それらを地図上に展開し、

自然環境や社会環境の現況などを把握し分析する必要があります。

 

 

 

たとえば、実際は考えられませんが、砂漠のような何もないような場所に

立地する場合と人口が密集し、様々な公共施設なども点在し、周囲には里山が広がり、

清冽な河川も流れているような場所では、誰が考えても環境への影響は後者の方が大きく、

それらを十分調査しなければいけません。

 

 

 

この時に活躍するのがGISです。

GISが今ほど普及していなかった昭和のような時代であれば、

これらの関係した資料を役所の資料室や図書館などを何度も訪れ、

資料借用、コピーなどして、その後、それを図面に書き込みしたり、

コピーして貼り付けるなどして、やっと一つの図面を作成していました。

 

 

 

たとえば、現存植生図と貴重動植物や特定植物群落などの

自然環境情報を重ね合わせるような作業は、不器用な私は難解を極め、

縮尺を合わせコピーし、定型の用紙に関係地域の範囲を切り貼りし、

貴重動植物位置などの点情報は一つ一つ手作業で書き込む、

そのうえでやっと検討ができるような感じでした。

今考えても恐ろしいほど、複雑な作業と多くの時間を要する作業でした。

修正などが後日指摘されたような場合は大変でした。

 

 

 

ところがGISの普及とともに、このようなアナログな作業はめっきり必要性がなくなりました。

GISは、デジタルの地図上に様々な情報を重ね、

それらの情報を用いて多種多様な分析を行うシステムです。

この情報とは、面的な情報(ポリゴンといいます)、点情報(ポイントといいます)、

線情報(ラインといいます)などの図形の情報データ、

さらにその図形がどのような特性や名称、数値などを持っているかを示す属性データが

それぞれ関連された情報ファイルとなっています。

 

 

 

最も普及しているものとしては、シェープファイル(Shape File)と言われ、

アメリカのESRI社というところで開発されたもので、現在、

日本では様々なデータがこのシェープファイルで公表、公開されています。

 

 

 

前述したような現存植生図と貴重動植物や特定植物群落などの

自然環境情報を重ね合わせるような作業を行う場合は、

今では机上でほとんどのことができてしまいます。

 

 

 

ただ、これらはあくまでも確かな調査に裏付けされたデータがあっての話です。

いい加減な調査データでは、いくらGISで図面上に綺麗に展開したところで何の意味もありません。

ここは、大変重要なところです。

GISでいろいろな解析などする時は、いつ、誰が、どんな方法で調査し、

どのような情報整理をしたかなどきちんと確認することが大切です。

 

 

 

余談ですが、現在はシステムで日常のほとんどのことができるような時代になってきました。

スーパーマーケットの会計、銀行のATM、出張先の飲み屋の検索、

まるで知らない場所に行く際のルート検索、

Google Earthによる全世界の航空写真閲覧・ストリートビュー、

AIによるビッグデータの解析などなど、

あげていけばきりがないほどシステム開発はとどまるところを知りません。

 

 

 

昔は、時間は要するものの図面を切り貼りしながら、

自ずとそれらの情報が頭に入り、図面が完成するころには、

報告書の文章も何となく頭の中で出来上がっていたような感じでした。

 

 

 

話しをGISに戻します。

まず、上記のような作業を行う場合は、

ベースとなる地図(基図といいます)を準備しなければいけません。

紙の地図でも可能ですが、GISを使う場合は、私は国土地理院で公開している国土基盤図を用います。

必要な場所、区域を選びHP上からダウンロードし、必要な情報を選びます。

 

 

 

たとえば、道路の車線や歩道などの詳細な図は必要がなければ除きます。

また、山間部などの地形が入り組んだような地域の場合は、

等高線が細かく表示され、報告書に記載する場合、

等高線で真っ黒になってしまいますので、必要に応じて選択します。

この時点で既にGISに展開することができますので、

私の場合はArc GISでベース図を見てみます。

GISは拡大縮小、場所移動も自由自在ですので、必要な範囲を報告書に収まるように設定します。

 

 

 

今度は、その地図上に表示する現存植生図などの自然環境情報ですが、

これらは環境省で全てシェープファイルの形式で公開されており、
HP
から必要な範囲をダウンロードし、

先ほどのベースマップにGIS上で重ね合わせしてみます。

 

 

 

濃度の調整などすると背景の地図が薄く見え、

この場所はこんな植生なんだなと理解することができます。

貴重動植物のように公開されていない情報がある場合は、GIS上に自分で入力します。

ちなみに貴重動植物の位置情報は、盗掘などの恐れがあるため、一般的に公開されていません。

 

 

 

このようにして、一つの図面ができあがります。

ここで、不思議に思う方がいらっしゃるかもしれません。

それは、図面を作るだけであれば、

グラフィックソフトを使ってもできるのではないかということです。

確かにグラフィックソフトで綺麗な図面作成は可能だと思います。

むしろ綺麗な図面を作るのであればグラフィックソフトの方が良いかもしれません。

しかし、GISは違います。

 

 

 

先ほどご説明いたしましたが、シェープファイルには属性データが含まれています。

そのため、一定の範囲を選択し、面積を集計したり、

範囲内の施設をリストアップしたりすることができます。

また、一定の情報だけを選択し、属性検索を行い、それらだけを図面上に表示することも可能です。

多種多様な解析が可能なところがまるで違う点です。

 

 

地図上だけではどうも少々寂しいような場合は、シェープファイルをデータ変換し、

Google Earth上に展開することもできます。

そうすれば、対象とする区域の航空写真上に様々な情報を展開し、

また違った「見える化」をすることが可能です。

 

 

 

国や地方自治体などで公開されているGISデータには様々なものがありますが、

代表的なものが国土地理院で公開している国土数値情報でしょう。

行政区域、都市計画用途地域、

廃棄物処理施設(一般廃棄物処理施設・産業廃棄物処理施設・最終処分場)、

公共施設、医療機関、自然公園区域、鳥獣保護区域、福祉施設などなど、

多くの一般的に使用されるような情報がシェープファイルの形式で公開されており、

誰でもダウンロードしGISで使用することができます。

 

 

 

他にもいろいろありますが、国勢調査結果や農林業センサス等を使用したい場合は、

政府統計の統計GISが活用できます。

また、環境省自然環境局からは、自然環境保全基礎調査結果のシェープファイルが公開されており、

環境アセスメントなどに必須のものです。

 

 

GISは環境に限らず、街づくりなどの都市計画や自然災害などの防災、

中国をはじめ世界中に広がっている新型コロナウィルスの感染域など、

地図で表現した方がわかりやすいもの、多くの視点からの解析も可能なことから

GISはコンサルタントには不可欠なものとなりました。

 

 

 

ただし、前述した通り、GISを使って様々なことはできますが、

基本となるのはシェープファイルとして整備、

作成されたデータが正確なものか、という点です。

ここをおろそかにしてしまったのではいけません。

 

 

 

最後に全国でも廃棄物処理施設数の多い愛知県について、

500mメッシュの人口分布図に廃棄物処理施設位置を重ね合わせた図をご紹介します。

当然でしょうが、人口の少ない沿岸部の工業地域や山間部に点在していることがわかります。

 

 

 

最終処分場や焼却施設など建設する際は、環境への影響がやはり大きく、

事前に環境アセスメントや生活環境影響調査を行いますが、

その際も今回お話ししたGISを大いに活用し、周辺の環境を把握し、

場合によっては、計画段階からの用地選定も可能です。

 

 

 

複雑化する社会、そのような中で事業を進めていく際には、様々な検討が必要だと思います。

汗をかいて現場を歩き丁寧な現地調査を行うとともに、

GISのような画期的なシステムを活用し、

多面的な検討を行うことが近年特に重要だと考えています。

 

 

 

 

技術士(総合技術監理部門・建設部門) 鎌田真裕