技術士の鎌田です。

 

 

 

今回は、廃棄物の焼却施設について、私のこれまでの経験談などや皆さんが事業を進めるにあたっての留意点について書いてみたいと思います。

 

 

 

最終処分場の埋め立て残余容量がひっ迫し、リサイクルもままならないとなれば、廃棄物処理にあたって減容化などのために焼却施設はやはり必要な施設です。

市町村が回収する一般廃棄物についても、立地計画や施設設計、地元協議、環境調査など、紆余曲折することがしばしばですが、焼却施設を事業化し、建設することがほとんどです。

 

 

 

ただ、現実的には年々地元との調整が難航を極め、それらの調査検討などに長期間を要することとなります。

焼却施設の場合、特に市町村が設置する一般廃棄物処理施設などは最新の知見をもとに入念な計画設計や調査検討を行いますが、それでも住民の理解をなかなか得ることが難しいのが現状です。

 

 

 

 

私が考えるには、これは科学技術的な問題はもちろんクリアすべきものですが、それ以外に感情的、利己的な考えや思想があると思います。

ゴミは出すけれども処理は自分の住んでいるところから遠く離れた場所で行ってほしい、というものです。住民にとっては素直な思いだろうと感じますが、これでは廃棄物処理は一向に前進しません。

 

 

 

話しは少しずれますが、発電所の建設、特に原発などとなれば大きな社会問題となり、建設を促進したい事業者や自治体と地元住民、各種団体などとの間に衝突が起きる事さえ生じます。

この場合も、電気は使うけれども発電所の建設は認めたくない、という住民の意向が働いていると思います。(ちなみに関係ありませんが、福島第一原発事故以降、私も原発の建設には反対ですが)

沖縄の基地問題も同様の話しだろうと思います。

国土は守ってほしいけれども自分たちの住んでいるところには基地はつくらないでほしいという論理です。

 

 

 

私が日常接する機会の多い産業廃棄物処理施設の中でも焼却施設は最終処分場と同様に環境へのインパクトが大きく、それに比例するように住民の反対運動などが大きくなることがあります。

破砕処理施設などの場合は、環境影響調査項目として施設の稼働に伴う騒音、振動、大気(粉じん)などが主なものですが、どれも広範囲に影響を及ぼすことは少なく、用地選定や適切な環境保全対策を施すことにより環境への影響を最小化することができます。

 

 

 

ところが、焼却施設の場合は、工業地域への立地などの用地選定や煙突からの排ガスによる最大着地濃度の出現距離を考慮し、広範囲な調査対象地域を設定し、気象や大気汚染の状況を的確に把握することが必要となり、規模にもよりますが、破砕処理施設のように100m程度の範囲ではありません。

 

 

 

環境の技術者としてできることは、これらの調査検討などを丁寧に行うことにつきますが、前述のような住民感情に接することも多くあり、環境への影響を最小化しているという内容をわかりやすく説明すると同時に事業の必要性について理解を仰ぐことも大切だと感じています。

産業廃棄物処理などの民間の事業者の場合は、俗に言えば反発も強くなりがちで、行政も審査機関として長期間に渡り厳しいチェックを行うわけですので、産業廃棄物処理施設の建設事業の必要性の理解とともにある程度のバックアップをしてほしいというのが正直な気持ちです。

 

 

 

事業の内容にもよりますが、焼却に伴い発生する熱を利用する廃棄物発電やごみを改質し固形燃料化とする廃棄物固形燃料化(RDFRPF)、焼却灰の再生材利用土木資材への活用、さらにはごみを熱分解したときに発生するガスを燃焼あるいは回収し、焼却灰、不燃物などを溶融する直接溶融炉・灰溶融炉など、最新の技術を積極的に導入している事業もあり、前段に記載した住民感情などがあることは十分理解できますが、社会にとって必要な施設であることを冷静に判断してほしいところです。

 

 

 

話しは変わりますが、少し昔話になりますが、私とゴミ焼却施設との接点をお話しします。

 

市町村のごみ焼却施設の機能検査がその始まりでした。

当時は、今のように連続炉ではなく、作業員が炉内に人力でごみを投入する機械化バッチ式の施設も随分ありました。

少し大きな市などでストーカ式(ごみを火格子(ストーカ)の上で移動させ、ストーカの下から送り込んだ燃焼空気によって焼却する形式のものです)の燃焼炉があるのがせいぜいでした。

夕方には焼却を停止し、翌日の作業開始まで少しくすぶっているような施設も多々ありました。

分別収集などもまだまだ行き届かなかった時代ですので、廃プラスチックに起因する有害物質の塩化水素なども当然のように検出されていました。

 

 

 

私はそのような施設に搬入されるごみ質の分析や大気汚染調査(ばいじん・窒素酸化物・硫黄酸化物・塩化水素など)、炉内温度・酸素濃度などの燃焼状況の把握、洗煙排水・焼却灰の分析などを総合的に調査し評価するような仕事をしていました。

ただ時代は少しずつ変わり、ダイオキシン類の発生が規制されることとなり、機械化バッチ式の焼却炉などは姿を消し、一般廃棄物のごみ焼却施設などは24時間連続で稼動する全連続炉型式がほとんどとなりました。

 

 

 

次に焼却施設に関わる環境アセスメントについてお話しします。

 

焼却施設については、ご承知のように廃棄物処理法に基づく生活環境影響調査があります。

それ以外に、都道府県や市などによって規模要件は様々ですが、条例に基づく環境アセスメントが義務付けられています。

以前もこのコラムで同じようなことについて記載したことがありますが、どこかのホームページでいずれも技術的には同様のような内容である旨の回答を見たことがありますが、環境アセスメント全体の内容やスケジュール、審査する役所側の体制などは、経験上まるで違います。

 

 

 

廃棄物処理法に基づく生活環境影響調査の場合は、あくまで大気、騒音振動、悪臭等の生活環境が対象となりますが、条例アセスメントの場合は、それらに動植物、地形地質、景観などの自然環境も対象となり、環境項目がまるで違います。

また、生活環境影響調査の場合は、自治体にもよりますが、特に焼却施設や最終処分場の場合は、廃棄物審議会などの審査委員によって審査され、条例アセスメントの場合は、環境影響評価審査会などによって審査されることが多いと思います。

同じようなものだろうと考えられる方もいらっしゃるかもしれませんが、経験上、条例アセスメントの審査会の方が格段に厳しい指摘がなされることが多いです。

 

 

 

ただし、産業廃棄物処理施設で最も設置数の多い破砕処理施設の場合は、自治体にもよりますが、出先の廃棄物環境担当部署で審査し、必要な指摘対応などして終了となりますが、焼却施設や最終処分場の場合は、県庁などの本庁の廃棄物担当課でじっくり審査されることが通常です。

 

 

 

条例アセスメントと生活環境影響調査の違いは、当然のことながら、事業スケジュールにも影響してくることが多く、条例アセスメントの場合、通常でも配慮書や方法書などのスタートから評価書提出まで少なくても3年以上要することが普通です。

これは、自然環境調査に要する期間として通年調査が必須であるうえに、手続きの中で最終報告書(評価書)に至るまでに上述の方法書や準備書を作成し、それぞれに審査会の審査を受け、それらの指摘に対応する期間が非常に長く必要となるためです。

 

 

 

また、条例アセスメントの場合は、評価書提出後の事業認可後においても事後調査が求められ、相応の時間と費用を要することを忘れてはいけません。

事後調査は、環境アセスメントが最新の知見をもとに調査予測評価したとしても不確実性の伴うものであるため、事業がスタート(工事開始)し、供用開始に至るまでに報告書で予測評価したような状況になっているか確認するステップが必要という考えから始まったものです。

事業者はこの事後調査の位置づけを失念していることも多く、工程や事業費の中に初めから組み込んでおく必要があります。

 

 

 

一方、生活環境影響調査の場合は、大気汚染の現地調査に年間変動を捉える必要が生じたとしても、事業内容や住民対応に大きな問題がなければ3年間は要しないと思います。

焼却施設に限りませんが、アセスメントが必要になるような事業を計画する際には、条例アセスメントや生活環境影響調査の規模要件などを予め確認したうえで、計画設計をスタートし、調査に臨むことが重要であり、結果的に事業スケジュールの短縮につながるものだろうと考えます。

 

 

 

現実的には焼却施設を新たに設置する場合、たとえば処理施設の種類ごとの処理能力の合計が200t/日以上が条例アセスメントの対象事業であるとすれば、190t/日であれば対象事業とはなりません。

そのため、この程度の対象事業規模のギリギリのところで計画することもあると思います。

ただ、このあたりは役所もお見通しで、近い将来、やはり処理能力が足りないなどの理由で増設せざるを得ない状況になったときに厳しい指摘が来ることも予想されます。

 

 

 

これに関して東京都では、環境影響評価条例において「廃棄物処理施設の設置又は変更」にあたっては、ごみ処理施設の場合、設置の段階では処理施設の種類ごとの処理能力の合計が200t/日以上が対象規模となりますが、増設する段階では、処理施設の種類ごとの処理能力の合計が100t/日以上かつ増設後の処理能力が200t/日以上となっています。

要は新設する段階で200 t/日未満で計画し、条例アセスメントの手続きを免れたとしても、後にやはり増設する必要性が生じ、さらに100t/日程度の処理能力の施設を計画した場合は、合計の処理能力が200t/日以上となり、それらを併せた環境アセスメントが求められるということです。

 

 

 

私は工業団地などの面整備に関する環境アセスメントも長い間行ってきましたが、前記のような手法で対象事業にならないように面積要件を勘案し、第1期計画、第2期計画のように整備する事業にはからずも携わったことがありますが、結果的に隣り合った用地が開発され、合計すると条例アセスメントの規模要件を超えてしまったことがあります。

役所からは初めからこのような事業を計画していたのではありませんか、などと指摘を受けたことがあります。

私が計画した事業ではありませんでしたが、携わった環境の技術者として、予め少なからず予想されていたこともあり、事業者に対して環境への影響を十分説明しなければいけなかった案件だったと反省しています。

 

 

 

持続可能な開発、経済発展と自然環境との調和は誰しもが否定しないと思います。

ただ、環境の技術者として40年以上コンサルタントをしていますが、やはり建設事業の実施、社会経済優先が第一にあり、環境保全が二番目ということをしばしば感じてきました。

 

 

 

焼却施設の話しからだいぶそれてしまいましたが、事業者の皆さんには、自分たちの廃棄物処理事業でどの程度の処理能力を求めるか精査し、環境アセスメントの対象事業となった場合は、環境保全対策を十分考慮し、必要な時間を確保したうえで、堂々と環境アセスメントや生活環境影響調査を行ってほしいものです。

 

 

 

技術士(総合技術監理部門・建設部門) 鎌田真裕