廃棄物処理施設を設置するにあたって必要な許可は、廃掃法15条に規定する施設設置許可だけではないかもしれません。

廃掃法15条の許可とセットで必ずと言っていいほど問題になるのが「建築基準法51条但書許可」と呼ばれているもの。

建築基準法51条に関しては、じっくりと条文を読み込んでいなければ、許可の必要性の判断はできません。

また、廃掃法のみに慣れている廃棄物処理業者にとっては、建築基準法というのは馴染みがなく、それがよく分からない原因なのかもしれません。

今回の記事では、建築基準法51条を読みながら51条但書許可について、あくまでも廃棄物処理施設の設置という観点から解説してみたいと思います。

まずは、建築基準法51条本文を読んでみましょう。


建築基準法51条本文

都市計画区域内においては、卸売市場、火葬場又はと畜場、汚物処理場、ごみ焼却場その他政令で定める処理施設の用途に供する建築物は、都市計画においてその敷地の位置が決定しているものでなければ、新築し、又は増築してはならない。


法律の条文というのは読み慣れていないと無味乾燥な長文の中で迷子になってしまい、結局なにがいいたいのかよく分からないということになることもあります。

51条は本文と但書の2文から構成されていますが、施設設置に伴う許認可で出てくるのは但書ばかりなので、但書が重要だと思われるかもしれません。

しかし、建築基準法51条の場合、本文は原則、但書が例外規定になっています。

先に本文=原則を把握しなければ、但書の例外規定の意味の把握は困難です。

51条本文の最後には「新築し、又は増築してはならない。」と書かれています。

つまり51条本文は、新築増築の禁止規定であると読んでください。

建築基準法とはどのような法律であるのかに関しては、建築基準法の1条に書かれています。

こちらも引用しましょう。


建築基準法1条

この法律は、建築物の敷地、構造、設備及び用途に関する最低の基準を定めて、国民の生命、健康及び財産の保護を図り、もつて公共の福祉の増進に資することを目的とする。


建築基準法の目的は、「建築物の敷地、構造、設備及び用途に関する最低の基準を定め」ることにあるわけです。

建築基準法の定める法的な基準により一定の条件に当てはまる建築物の新築増築を禁止しているのが51条本文であるということです。

次に、どのような要件に当てはまる建築物の新築増築を禁止しているのかを51条本文から読み解いていきます。

要件が整うと新築増築が禁止される積極的要件が2つ、逆に要件が整うとその禁止が解除される消極的要件が1つ、合計3つの要件が51条に列挙されていますので、順番に見ていきましょう。

51条によって禁止される積極的要件①

51条本文を要約してみます。


「都市計画区域内において(中略)新築し、又は増築してはならない。」


51条によって新築増築が禁止されるのは、都市計画区域内に限ります。

この規定を反対に解釈すれば、都市計画区域外であれば、新築増築は禁止されないということです。

では、「そもそも都市計画とはなんぞや?」という疑問にも簡単に答えてみます。

次に登場するのが都市計画法ですので、ここでも条文を引用します。


都市計画法1条

この法律は、都市計画の内容及びその決定手続、都市計画制限、都市計画事業その他都市計画に関し必要な事項を定めることにより、都市の健全な発展と秩序ある整備を図り、もつて国土の均衡ある発展と公共の福祉の増進に寄与することを目的とする。


都市計画という言葉を分かりやすく「まちづくり」と呼んでも差支えないでしょう。

日本では土地を私的に所有することができます。

所有権は元来、所有者がいかようにでも使用することが許されるはずなのですが、土地利用に所有権の絶対性(=所有者が好きなように使うことができる)を貫くと弊害もあり、多様な目的から土地利用の規制が及んでいます。

その中のひとつの規制に、まちづくりがあるわけです。

計画的で統一的なまちづくりを進めるためには、工業団地の中に学校や病院があってはまずいのと同様、住宅地の中に廃棄物処分場があってもまずいというわけです。

そこで行政は都市計画を策定し、それに基づいたまちづくりを進めることが求められているわけです。

この都市計画の規制が法律で及ぶ地域のことを都市計画区域というわけです。

もちろん全ての国土に都市計画が存するというわけではありません。

そうでない土地のことを都市計画区域外と呼びます。

都市計画区域には市街化調整区域と市街化調整区域等があり、市街化区域にはさらに以下のような区分分けがあります。


第一種低層住居専用地域

第二種低層住居専用地域

第一種中高層住居専用地域

第二種中高層住居専用地域

第一種住居地域

第二種住居地域

準住居地域

田園住居地域

近隣商業地域

商業地域

準工業地域

工業地域

工業専用地域


この区分は非常に重要です。

市街化区域の中でも、これらのいずれに該当するのかによって廃棄物処理施設の設置ができるのかできないのかが決められることがあります。

また、市街化調整区域に関しても、都市計画区域内として51条により規制されます。

市街化調整区域に関しては、今度は都市計画法によって開発許可の対象となる可能性があり、廃棄物処理施設の設置許可申請手続はさらに複雑化することがあります。

いずれにせよ、これらの市街化区域及び市街化調整区域を包含する都市計画区域に該当する場合には、51条に規定する新築増築の規制が及ぶ事になりますので、原則新築増築は規制されています。

51条によって禁止される積極的要件②

再度、51条本文を要約して、2つ目の要件を抜き出してみます。


「卸売市場、火葬場又はと畜場、汚物処理場、ごみ焼却場その他政令で定める処理施設の用途に供する建築物は、(中略)新築し、又は増築してはならない。」


ここで「ごみ処理場」という言葉が登場しており、これが産業廃棄物の中間処理施設のことだろう、と思った方もいるかもしれませんが、「ごみ」とは一般廃棄物を指す用語で、産廃の中間処理施設はここには含まれません。

51条本文に列挙している施設は限定列挙ですが、法律は政令にその施設の範囲についての限定を委任しています。

それを受けて、建築基準法施行令は以下のように規定しています。


建築基準法施行令130条の2の2

法第五十一条本文(法第八十七条第二項又は第三項において準用する場合を含む。)の政令で定める処理施設は、次に掲げるものとする。

一 廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行令(昭和四十六年政令第三百号。以下「廃棄物処理法施行令」という。)第五条第一項のごみ処理施設(ごみ焼却場を除く。)

二 次に掲げる処理施設(工場その他の建築物に附属するもので、当該建築物において生じた廃棄物のみの処理を行うものを除く。以下「産業廃棄物処理施設」という。)

イ 廃棄物処理法施行令第七条第一号から第十三号の二までに掲げる産業廃棄物の処理施設

ロ 海洋汚染等及び海上災害の防止に関する法律(昭和四十五年法律第百三十六号)第三条第十四号に掲げる廃油処理施設


この施行令130条の2の2が「産業廃棄物処理施設」につき都市計画区域に新築増築を禁止している根拠になります。

ところで、建築基準法施行令では、産業廃棄物処理施設の定義につき「廃棄物処理法施行令第七条第一号から第十三号の二までに掲げる産業廃棄物の処理施設」と定めており、建築基準法独自の観点からの「産業廃棄物処理施設」の定義は行っていません。

建築基準法における「産業廃棄物処理施設」の定義については、廃掃法にお任せされたわけです。

結果、建築基準法施行令は廃掃法7条の施設を引用ということで、これは所謂「15条施設」のことを指しています。

ここで建築基準法の「廃棄物処理施設」の概念は、廃掃法の「廃棄物処理施設」の概念とピタリと符合することになったわけです。

51条によって禁止される要件③(これは消極的要件)


都市計画区域内においては、(中略)ごみ焼却場その他政令で定める処理施設の用途に供する建築物は、都市計画においてその敷地の位置が決定しているものでなければ、新築し、又は増築してはならない。(下線筆者)


都市計画によりその敷地の位置が決定されているものに関しては、51条による新築増築の規制はかかっていない、ということになります。

産業廃棄物処理施設の場合は、この消極的要件により規制回避される場面というのは、現実的ではないでしょう。

以上、51条本文を読んでみました。

建築基準法だけでなく、建築基準法の目的規定や施行令、都市計画法、廃掃法を併せて読むことで、51条の規制内容が浮かび上がってきます。

この後、廃棄物処理業者にとってはお馴染みの51条但書許可についての話になるわけですが、51条但書は例外規定であり、本文に原則が書いている、ということを忘れてはいけません。

51条本文の要点

①増築改築の禁止規定

②都市計画区域内においてのみ適用がある

③「その他政令で定める処理施設の用途に供する建築物」の中に廃掃法施行令7条の廃棄物処理施設が含まれる

④都市計画で位置が決められた施設は適用外

建築基準法51条本文では、廃棄物処理施設の新築増築を原則禁止しています。

この禁止を例外的に解除する規定こそが、51条但書なのです。

51条但書を引用します。


建築基準法51条但書

ただし、特定行政庁が都道府県都市計画審議会(その敷地の位置を都市計画に定めるべき者が市町村であり、かつ、その敷地が所在する市町村に市町村都市計画審議会が置かれている場合にあつては、当該市町村都市計画審議会)の議を経てその敷地の位置が都市計画上支障がないと認めて許可した場合又は政令で定める規模の範囲内において新築し、若しくは増築する場合においては、この限りでない。


やはり条文が長いので、迷子になりそうです。

今回も要件を浮かび上がらせるために、条文を抜粋してみます。

ただし、特定行政庁が(中略)都市計画上支障がないと認めて許可した場合又は政令で定める規模の範囲内において新築し、若しくは増築する場合においては、この限りでない。

特定行政庁は、建築基準法2条に定義規定がありますが、ここでは都道府県知事または市町村長と読み替えましょう。

以下の2つの要件のいずれかが整えば、51条本文=新築増築制限について「この限りでない」、つまり新築増築しても構わない、と言っているのです。

51条但書により本文の規制が解除される要件①

特定行政庁が都市計画上支障がないと認めて許可した場合

この特定行政庁に都市計画上支障がないと認めさせる手続が、建築基準法51条但書許可の本質です。

51条本文の消極的要件は都市計画に定めがある場合でしたが、但書許可に関しては都市計画に定めがないが、都市計画に支障がない場合ということになります。

51条但書により本文の規制が解除される要件②

政令で定める規模の範囲内において新築し、若しくは増築する場合

これに関しては、建築基準法施行令を読むしかありません。

熟読は不要ですが、3号は目を通してみてください。


建築基準法施行令130条の2の3

法第五十一条ただし書(法第八十七条第二項又は第三項において準用する場合を含む。以下この条において同じ。)の規定により政令で定める新築、増築又は用途変更の規模は、次に定めるものとする。

一 第一種低層住居専用地域、第二種低層住居専用地域、第一種中高層住居専用地域、第二種中高層住居専用地域、第一種住居地域、第二種住居地域、田園住居地域及び工業専用地域以外の区域内における卸売市場の用途に供する建築物に係る新築、増築又は用途変更(第四号に該当するものを除く。)

延べ面積の合計(増築又は用途変更の場合にあつては、増築又は用途変更後の延べ面積の合計)が五百平方メートル以下のもの

二 汚物処理場又はごみ焼却場その他のごみ処理施設の用途に供する建築物に係る新築、増築又は用途変更(第五号に該当するものを除く。)

処理能力(増築又は用途変更の場合にあつては、増築又は用途変更後の処理能力)が三千人(総合的設計による一団地の住宅施設に関して当該団地内においてする場合にあつては、一万人)以下のもの

三 工業地域又は工業専用地域内における産業廃棄物処理施設の用途に供する建築物に係る新築、増築又は用途変更(第六号に該当するものを除く。)

一日当たりの処理能力(増築又は用途変更の場合にあつては、増築又は用途変更後の処理能力)が当該処理施設の種類に応じてそれぞれ次に定める数値以下のもの

イ 汚泥の脱水施設 三十立方メートル

ロ 汚泥の乾燥施設(ハに掲げるものを除く。) 二十立方メートル

ハ 汚泥の天日乾燥施設 百二十立方メートル

ニ 汚泥(ポリ塩化ビフェニル処理物(廃ポリ塩化ビフェニル等(廃棄物処理法施行令第二条の四第五号イに掲げる廃ポリ塩化ビフェニル等をいう。以下この号において同じ。)又はポリ塩化ビフェニル汚染物(同号ロに掲げるポリ塩化ビフェニル汚染物をいう。以下この号において同じ。)を処分するために処理したものをいう。以下この号において同じ。)であるものを除く。)の焼却施設 十立方メートル

ホ 廃油の油水分離施設 三十立方メートル

ヘ 廃油(廃ポリ塩化ビフェニル等を除く。)の焼却施設 四立方メートル

ト 廃酸又は廃アルカリの中和施設 六十立方メートル

チ 廃プラスチック類の破砕施設 六トン

リ 廃プラスチック類(ポリ塩化ビフェニル汚染物又はポリ塩化ビフェニル処理物であるものを除く。)の焼却施設 一トン

ヌ 廃棄物処理法施行令第二条第二号に掲げる廃棄物(事業活動に伴つて生じたものに限る。)又はがれき類の破砕施設 百トン

ル 廃棄物処理法施行令別表第三の三に掲げる物質又はダイオキシン類を含む汚泥のコンクリート固型化施設 四立方メートル

ヲ 水銀又はその化合物を含む汚泥のばい焼施設 六立方メートル

ワ 汚泥、廃酸又は廃アルカリに含まれるシアン化合物の分解施設 八立方メートル

カ 廃ポリ塩化ビフェニル等、ポリ塩化ビフェニル汚染物又はポリ塩化ビフェニル処理物の焼却施設 〇・二トン

ヨ 廃ポリ塩化ビフェニル等(ポリ塩化ビフェニル汚染物に塗布され、染み込み、付着し、又は封入されたポリ塩化ビフェニルを含む。)又はポリ塩化ビフェニル処理物の分解施設 〇・二トン

タ ポリ塩化ビフェニル汚染物又はポリ塩化ビフェニル処理物の洗浄施設又は分離施設 〇・二トン

レ 焼却施設(ニ、ヘ、リ及びカに掲げるものを除く。) 六トン

四 法第五十一条ただし書の規定による許可を受けた卸売市場、と畜場若しくは火葬場の用途に供する建築物又は法第三条第二項の規定により法第五十一条の規定の適用を受けないこれらの用途に供する建築物に係る増築又は用途変更

増築又は用途変更後の延べ面積の合計がそれぞれイ若しくはロに掲げる延べ面積の合計の一・五倍以下又は七百五十平方メートル以下のもの

イ 当該許可に係る建築又は用途変更後の延べ面積の合計

ロ 初めて法第五十一条の規定の適用を受けるに至つた際の延べ面積の合計

五 法第五十一条ただし書の規定による許可を受けた汚物処理場若しくはごみ焼却場その他のごみ処理施設の用途に供する建築物又は法第三条第二項の規定により法第五十一条の規定の適用を受けないこれらの用途に供する建築物に係る増築又は用途変更

増築又は用途変更後の処理能力がそれぞれイ若しくはロに掲げる処理能力の一・五倍以下又は四千五百人(総合的設計による一団地の住宅施設に関して当該団地内においてする場合にあつては、一万五千人)以下のもの

イ 当該許可に係る建築又は用途変更後の処理能力

ロ 初めて法第五十一条の規定の適用を受けるに至つた際の処理能力

六 法第五十一条ただし書の規定による許可を受けた産業廃棄物処理施設の用途に供する建築物又は法第三条第二項の規定により法第五十一条の規定の適用を受けない当該用途に供する建築物に係る増築又は用途変更

増築又は用途変更後の処理能力が、それぞれイ若しくはロに掲げる処理能力の一・五倍以下又は産業廃棄物処理施設の種類に応じてそれぞれ第三号に掲げる処理能力の一・五倍以下のもの

イ 当該許可に係る建築又は用途変更後の処理能力

ロ 初めて法第五十一条の規定の適用を受けるに至つた際の処理能力


2 特定行政庁が法第五十一条ただし書の規定による許可をする場合において、前項第四号から第六号までに規定する規模の範囲内において、増築し、又は用途を変更することができる規模を定めたときは、同項の規定にかかわらず、その規模を同条ただし書の規定により政令で定める規模とする。

建築基準法施行令130条の2の3で示される「51条但書により本文の規制が解除される要件②」に当てはまらないものは、廃掃法施行令7条に定められている廃棄物処理施設の範囲よりも広いということが分かります。

ここに、廃棄物処理施設(廃掃法15条の許可対象施設)でありながら、建築基準法51条許可不要という2つの法令の”隙間”の施設が生まれることになるわけです。

廃掃法15条の許可を受けて廃棄物処理施設を設置するには、建築基準法施行令の裾切り等の要件に該当しない限りは51条但書許可も必要になるという廃棄物処理業者の一般的理解を条文で裏付けると、以上のような筋道になるわけです。

最後の要件=都計審について、51条但書の条文を抜粋して解説します。


ただし、特定行政庁が(中略)都市計画審議会(中略)の議を経てその敷地の位置が都市計画上支障がないと認めて許可した場合(中略)(は)、この限りでない。


特定行政庁は、51条但書許可をするためには、法律により都道府県または市町村の都市計画審議会の議を義務付けられています。

そもそも、廃棄物処理施設が都市計画に適合する施設であるかどうかの判断は、法的な判断というよりも、社会的な総合判断を伴うこともあるかと思います。

そこで、都市計画審議会には学識経験者や住民代表等多様な方が参加することになりますが、廃棄物処理施設の設置を計画している事業者にとってはここが住民説明とともにひとつの関所になるのかもしれません。

まちづくりにおいて、廃棄物処理施設は欠かせない施設であることは間違いありません。

しかし、環境問題、公害問題に対する住民の不安も当然あるわけで、「廃棄物処理施設=迷惑施設は我が町の都市計画にそぐわない」と忌避される可能性も十分にあるわけです。

環境アセスメントと並び事業者の社会的責任を試される場なのではないでしょうか。

以上、建築基準法51条について記事にしてみました。

私は内外で色んな方の前で、条文に当たることの大切さを説いてきました。

今回、この記事を書きながら、ますます実務における条文の重要性を感じています。

(河野)