「破砕機を新設して産廃中間処理の許可を取りたい」



このように、漠然と相談をされることが多々あります。
同時に、できるだけ早く破砕機の導入を進めたいという話もよくお聞きします。
もちろん早く中間処理業をスタートさせたいという理由もあるでしょうが、
それ以外にも破砕機の設置を事業への投資と考えた場合に、
企業の資金計画、財務上の理由であったり、
諸々の事業がそこには存在していると思われます。



「中間処理の許可」と一言で言い表せるものではなく、
まず大きく「14条*の業の許可」と「15条*の施設の許可」があります。
(*廃掃法第14条・第15条。以下、14条・15条と記載します。)


実はこの14条と15条の許可の法的な性質を熟知していれば、
破砕機等の廃棄物の処理施設の導入時期を早めることができる可能性がある、
というのが本記事のテーマです。
冒頭の質問、中間処理の許可を取りたいと相談された際、
私がまず最初にお聞きする項目は、以下の3点です。



処理方法 (今回は「破砕」ということになります)
破砕する品目 (廃プラスチック類・がれき類・木くずの3品目の破砕か?)
処理能力 (t/h)



上記は廃掃法施行令第7条の規定の該当性を確認するために
必要不可欠なチェック項目です。
この3点を確認しない限りは、中間処理の許可が取れるか
どうかの判断には全く進まないことになります。



産業廃棄物を破砕機を使って中間処理したい、その目的はすぐに理解できます。
しかし、処理方法、品目、処理能力の3点を確認しない限り、
「中間処理の許可」と言っても、
どの許可が必要となるのかは分かりません。
中間処理の許可と広く言われているものは
様々な類型化ができるわけですが、
法律の条文による分類は根本的な
許可の性質の違いですので、決定的です。
中間処理の許可だと言って、
14条の許可と15条の許可を一括りにしてしまうことは、
あまりに性質の違うものを同じ括りで語ってしまうことで、
これは乱暴すぎるのです。
しかし、これが業界用語的に
往々にしてまかり通っているというのが実態です。



ここで問題になっている中間処理の許可の
条文による類型化について話を進めます。



中間処理の許可と呼ばれるものは2つ。



廃掃法14条の「業の許可」と、廃掃法15条の「施設の許可」です。



これらを併せて俗に「中間処理の許可」と呼んでいるだけで、
その性質は全くの別物です。
なお、実務上は処理フロー等によって、
必要な許可の種類や組み合わせが変わります。
業の許可のみが必要な場合、
施設の許可のみが必要な場合、
業の許可と施設の許可が両方必要な場合など、
いくつかのパターンがあります。



これから「中間処理の許可」を取得しようと考える事業者は、
その許可が14条の許可なのか、15条の許可なのか、
その両方なのかを見極めなければなりません。



14条と15条の許可の違いをなるべく分かりやすく説明します。



14条は業の許可です。「業」ですから、
他社の廃棄物を、金(廃棄物処理費)をもらって
処理するための許可ということになります。

廃棄物処理業というのは、
他人が排出した廃棄物を有料で処理を代行する業ということですから、
業の許可は廃棄物処理の商売を営んでいいよ、
という許可ということです。

そうなると、自社で排出した廃棄物を処理することは、
金をもらって廃棄物を処理する廃棄物処理業ではないから、
許可は不要になります。



一方、15条は施設の設置許可です。
排出元が自社であろうが他社であろうが、
施設の設置のための許可ということになります。

冒頭の事例では廃棄物処理施設は破砕機ですので、
破砕機を設置するための許可ということです。
自社で排出した廃棄物を自社の破砕機で破砕する場合、
これは廃棄物処理業ではありませんので
14条の業の許可は不要ですが、
処理方法・破砕する品目によっては
15条の施設設置の許可は必要になります。



「中間処理の許可」と一言でいっても、
複数の許可とその組み合わせがあり、その判断を必要とします。
この判断を誤ると、なかなか廃棄物の処理施設の設置が進みません。
手続きの出発点での法解釈を間違うと、
年単位の期間ロスを生じる可能性があります。



14条の許可を申請するつもりで事前協議を進めてきたが、
途中で15条の許可が必要であることが判明した場合、
15条の許可申請手続に向けて
事前協議をやり直さなければならないかもしれませんし、

建築基準法51条但書許可、
都市計画審議会などが手続に加わることで
事業開始が大幅に延びるかもしれません。

生活環境影響調査、いわゆるミニアセスに期間を要するかもしれませんし、
近隣住民との間の”何か”を別途求められるかもしれません。

破砕機の納期によっては違法状態ができてしまう虞もあります。

ですので、14条の許可が必要なのか、
15条の許可が必要なのか、
或はその両方が必要なのか、という判断は、
施設設置計画の初期段階で明確にしておかなければならない、
ということになります。



その中でも最も迷いが生じるのが、
15条の廃棄物処理施設の許可が必要であるかどうか
の判断ということになります。
当事務所のウェブサイト上にも令7条の表は載せていますが、
この表を見比べるだけで簡単に結論が出るか
といえば、そうではありません。



廃掃法15条の施設に該当するかどうかは、
廃掃法施行令7条で判断されます。
該当する施設を「15条施設」あるいは
「令7施設(レイナナシセツ)」などと一般に呼ばれています。



この施設が15条に該当する施設なのか、そうでないのかは、
当事務所でも案件ごとに幾度となく調査を進めてきました。
当事務所では基本的には、
事前協議前に15条施設に該当するかしないかの解釈について、
技術的な資料を作成して行政側と申請者側で
解釈の平仄を合わせるという手法を取っています。



ところで、「15条施設」あるいは「令7施設」は、
ときに「産業廃棄物処理施設」という言い方をすることがあります。
この「産業廃棄物処理施設」という言葉は要注意語でして、
2つの概念を持ちあわせていますので、
特に警戒してかからなければなりません。



産業廃棄物処理施設は、広義には
産業廃棄物を処理する施設全般を指して使われています。
15条の施設設置許可を要する施設のみならず、
14条の業許可を要する施設、
或いは無許可で自社処理をしている場合の施設も含めて、
産業廃棄物処理施設という言い方をすることがあります。
こちらは厳密な定義はありません。



これでは狭義の産業廃棄物処理施設=廃掃法15条施設、
施行令7条施設との区別が付かないということで、
広義の産業廃棄物処理施設を「産業廃棄物の処理施設」を
「産業廃棄物の処理施設」と呼び、
狭義の産業廃棄物処理施設と区別する用語の使用法
(北村慶喜教授「環境法 第4版」参照)
があり、私もこれに倣っています。



この産業廃棄物処理施設と産業廃棄物の処理施設の違いは、
廃掃法の許可について規定した条文が異なりますので、
廃掃法の手続が大きく異なります。
たとえば生活環境影響調査の要否など。
ところが、この違いは廃掃法を飛び越えて、
建築基準法の解釈にまで飛び火していくことになります。
建築基準法第51条を見てみましょう。



建築基準法第51条

都市計画区域内においては、卸売市場、火葬場又はと畜場、汚物処理場、ごみ焼却場その他政令で定める処理施設の用途に供する建築物は、都市計画においてその敷地の位置が決定しているものでなければ、新築し、又は増築してはならない。ただし、特定行政庁が都道府県都市計画審議会(その敷地の位置を都市計画に定めるべき者が市町村であり、かつ、その敷地が所在する市町村に市町村都市計画審議会が置かれている場合にあつては、当該市町村都市計画審議会)の議を経てその敷地の位置が都市計画上支障がないと認めて許可した場合又は政令で定める規模の範囲内において新築し、若しくは増築する場合においては、この限りでない。



この条文を見る限り、都市計画内で、
「汚物処理場、ごみ焼却場その他政令で定める
処理施設の用途に供する建築物」を建てるのは原則ダメ。
ただし、都市計画審議会を経て市町村が許可を出せば建設可能、
と書いているわけです。



この法律に産業廃棄物処理施設が該当するのかですが、
産業廃棄物処理施設は汚物処理場または
ごみ焼却場に該当するのでしょうか。



これには該当しないとされています。
一般用語では産業廃棄物も一般廃棄物もごみと呼んだりしますが、
法律用語で「ごみ」と表現されている場合は、
一般廃棄物を指すものと解釈されます。
なので、この次に挙げられている
「その他政令で定める処理施設の用途に供する建築物」
に産業廃棄物処理施設が該当しているのか、いないのか
を確認しなければなりません。



建築基準法51条を受けて、
基準法施行令130条の2の2が以下の通り規定しています。



建築基準法施行令130条の2の2


法第五十一条本文(法第八十七条第二項又は第三項において準用する場合を含む。)の政令で定める処理施設は、次に掲げるものとする。
一 廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行令(昭和四十六年政令第三百号。以下「廃棄物処理法施行令」という。)第五条第一項のごみ処理施設(ごみ焼却場を除く。)
二 次に掲げる処理施設(工場その他の建築物に附属するもので、当該建築物において生じた廃棄物のみの処理を行うものを除く。以下「産業廃棄物処理施設」という。)
イ 廃棄物処理法施行令第七条第一号から第十三号の二までに掲げる産業廃棄物の処理施設
ロ 海洋汚染等及び海上災害の防止に関する法律(昭和四十五年法律第百三十六号)第三条第十四号に掲げる廃油処理施設



政令では、51条の処理施設に該当する施設を
廃掃法施行令7条の施設(※最終処分場を除く)
としているのが読めると思います。
つまり、廃棄物処理施設であるかどうかの物差しである
令7条が建築基準法51条の許可の要否にまで
及んできているということなのです。



廃掃法施行令7条は廃掃法15条のみならず、
建築基準法51条の解釈のツールでもあるのです。
これは立法技術の話に留まるものでなく、
廃棄物処理施設設置手続に二重の目的の両立を求められることになる、
すなわち手続の複雑化を招くことになります。



建築基準法は廃掃法とは全く異なった立法趣旨、立法目的を有しています。
廃掃法15条の許可を要する場合は、

廃掃法1条の目的
(廃棄物の排出抑制、適正処理、生活環境の保全、公衆衛生の向上)

のみならず、全く別の立法趣旨を有する

建築基準法の目的
(建築物の敷地、構造、設備及び用途に関する最低の基準を定めて、国民の生命、健康及び財産の保護を図り、もつて公共の福祉の増進に資する)

も考慮しなければならなくなり、
手続の複雑化は避けられないことになるわけです。



ここまで14条の許可と15条の許可を解説してきましたので、
それを前提に冒頭のケースに戻って説明します。
「破砕機を新設して産廃中間処理の許可を取りたい」
上記の相談に対して、私は以下のお決まりの質問をするわけです。



「処理方法、破砕する品目、処理能力は?」



たとえば、品目ががれき類とガラスくず・コンクリートくず及び陶磁器くず
の2品目であったとしましょう。
処理能力は日量5tを軽く超えた破砕機です。
がれき類の破砕、日量5t以上で施行令7条に該当しますので、
この破砕機は15条の許可を必要とする廃棄物処理施設です。



一方、コンクリートくずの方は施行令7条に規定はありません。
14条の業許可のみで営業できる廃棄物の処理施設ということになります。
この場合、まずがれき破砕で15条の施設設置許可申請、
次に破砕機を設置してから、
がれき類とコンクリートくずで14条の業許可申請
というのが一般的な流れです。



そうなると、廃棄物処理施設の工事のタイミングは
15条の許可が出てからということになります。
仮に15条の許可を取らずに施設設置すれば、
それは違法ということになるでしょう。



廃掃法14条の許可は、処理施設がないと許可されません。
破砕機の設置が先、14条許可が後なのです。



一方の15条の施設は、許可がないと処理施設設置ができません。
15条許可が先、破砕機が後。



そうすると、上記に挙げた
①15条許可→②施設設置→③14条許可の順序は
法律で規定されているとも言えるわけです。



そうすると、破砕機の設置は施設設置許可の
タイミングにかかるという話になり、
そこには不確定要素(特に都市計画審議会)次第ということになります。
最低でも数千万円~の設備投資において、
時期的に不確定だというのは事業者にとっては耐え難いものかもしれません。



ところが、14条と15条の許可の法的性質の違いを理解しておけば、
破砕機設置のタイミングを合法的に前倒しすることができる可能性があります。



今回の事例では、がれき類の破砕(5t/d)以上なので
15条の許可なくして破砕機の設置ができないのです。



もしもこれがガラスくず・コンクリートくず及び陶磁器くずの
破砕施設であれば、逆に破砕機を設置していないと
14条の許可を取得できないことになります。



ですので、今回の事例でもしも破砕機の設置を急ぎたいのであれば、
がれき類の15条許可申請の事前協議を進めている間に
ガラスくず・コンクリートくず及び陶磁器くずの
14条許可申請を進めれば、施設設置が早まる可能性があるわけです。



実際にはもちろん、行政側との事前の綿密な打合せが必要になりますが、
コンクリートくずの処理施設設置に
15条の許可が必要だとは行政側も言えないでしょうから、
15条許可の出る前に破砕機を導入することができる可能性は十分にあると思います。



条文をよく読んで、手続の構造を熟知することの大切さを
ご理解いただければと思い、記事にしました。


条文が重要です。



(河野)