先行許可証提出による審査上のメリットと注意点について

この記事の目次

  1. 規則第9条の2第5項の規定による許可証の提出の有無
  2. 「先行許可」とは?
  3. 先行許可証提出による添付書類省略
  4. 先行許可証提出による欠格照会の省略
  5. 先行許可利用の際の注意点

産業廃棄物処理業の許可証というのは、発行する自治体ごとに様式が異なります。

収集運搬の許可証でいえば、日本全国に47都道府県分の様式があり、

他に政令市(現在は主に積替保管を含む収取運搬)の許可証もありますので、

様式の数はまだまだ多くなります。

 

この収集運搬の許可証ですが、許可業者でもおそらく、

きちんと読み込んだことがある人は少ないかもしれません。

 

この許可証のおそらく末尾に記載される文言について、今日は解説します。

 

規則第9条の2第5項の規定による許可証の提出の有無

収集運搬業の許可証の末尾に記載される内容。

それは、次のような文言です。

 

「規則第9条の2第5項の規定による許可証の提出の有無」

この文言の意味を知っている人は、産廃の許可申請経験のある行政書士でも少数派だと思います。

「これはなんだろう?」

と思って、廃掃法の施行規則の条文を読んでみても、

おそらくさっぱり意味が分からない条文ではないかと思います。

 

この廃掃法施行規則第9条の2第5項というのは、

先行許可についての記載をした規定です。

条文に記載のある「許可証の提出の有無」というのは、

この許可証が発行された際の申請書に、

先行許可証を提出しているかどうかの記載ということになります。

 

「先行許可」とは?

では、先行許可とはなにか。

先行許可制度とは、すでに産業廃棄物処理業の許可を持っている業者が、

その許可証の原本を呈示したり、写しを添付することで、

新たな許可申請時の添付書類を省略する方法です。

 

この説明では、よくわからないかもしれませんので、

一例を挙げてみます。

 

先行許可証提出による添付書類省略

すでに兵庫県で収集運搬業の許可を営んでいるA社があります。

このたび、大阪府でも収集運搬業の許可が必要になりました。

 

大阪府に対して、新規収集運搬の許可申請をすることになるので、

役員の住民票や登記されていないことの証明書を準備しなければいけない。

これが原則です。

 

ところが、大阪府の申請窓口で、

現に有効な兵庫県の収集運搬業の許可証の写しを申請書類に添付すると、

大阪府では、以下の書類の添付が不要になります。

・役員株主等の住民票の写し

・役員株主等の登記されていないことの証明書

 

添付書類が減るので、申請が楽になるような気がします。

公文書収集にかかる時間の短縮になり、その分早く申請が可能になります。

しかし、先行許可には、さらに時間を短縮できる利点があるのです。

 

先行許可証提出による欠格照会の省略

それは、「欠格照会の省略」というものです。

産廃業許可申請を受理した窓口では、申請書類に添付された公文書をもとにして、

欠格照会という作業を行っています。

 

犯歴がないか、社会的勢力との関わりはないか、

破産歴がないかなどは、各都道府県から警察等に照会がかけられています。

 

この照会に対して、回答が返ってくるまでの期間は、

許可申請が先へ進むことはありません。

つまり、欠格照会に審査の時間がかかっているのです。

 

この欠格照会が省略できれば、その日数分、許可が出るまでの期間は短縮できそうです。

実際、当事務所で1日も早く許可を取得したい場合は、

積極的に先行許可証を添付するようにしています。

 

それについて過去に書いた記事がありましたので、載せておきます。

行政書士が教える1日でも早く収集運搬許可を取得するための具体的な方法②

 

先行許可利用の際の注意点

この先行許可には、注意点がいくつかあります。

 

先行許可の注意点① 全ての自治体で、先行許可が使えるわけではない

先行許可証の添付を認める自治体と認めない自治体があります。

事前に電話で確認をしましょう。

 

先行許可の注意点② 全ての許可証が、先行許可証として使えるわけではない

ある県の申請では、先行許可証としてしようできる許可証の都道府県を絞っています。

たとえば、A県の許可証であれば先行許可証として利用できるが、

B県の許可証は先行許可証としては利用できない、など。

徳島県などは、許可日からの日数で使用可能かどうかの制限がありますし、

栃木県は栃木県の許可証しか先行許可証として認めていないと思います。(必ずご自身で役所に確認してください)

 

先行許可の注意点③ 役員株主に変動があると、先行許可証として使えない

前回別の自治体で許可を取得した際の役員や株主と、

今回申請する際の役員株主に違いがあれば、

おそらく先行許可は認めてくれないと思います。

 

先行許可の注意点④ 「規則第9条の2第5項の規定による許可証の提出の有無」が有

冒頭に記載した、許可証の末尾の文言。

これは、先行許可を使用した許可かどうか、ということなのです。

申請時に先行許可を利用した場合、ここには「有」と記載があります。

前回の申請時に先行許可を使った場合、先行許可を利用することはできません。

つまり、末尾の記載が「有」になっている許可証は、

先行許可証にはならない、ということです。

 

(河野)