産業廃棄物処理業許可申請書に添付する定款とチェック方法

産業廃棄物処理業の許可申請の際に必ず添付する書類のひとつとして、

会社の定款があります。

会社の定款とは、会社の基本規則でして、

商号や役員、目的、決算期などを定めたものをいいます。

 

通常は、この基本規則を書面にしたものを定款と呼びますので、

定款を添付するということは、

定款の基本規則が書面になったもの(=定款)を付けるということになります。

 

この定款に関して、産業廃棄物処理業許可申請前に必ずチェックする項目があります。

自社で許可申請書を作成される際にも、この記事のチェック項目が役に立つと思います。

この記事の目次

  1. 会社情報を記載した書面には定款と登記事項証明書がある
  2. 原始定款と変更後の定款
  3. 定款変更と変更登記
  4. 現実には定款(紙)の変更もれが圧倒的に多い
  5. 定款の目的と登記事項証明書の目的は同じか
  6. 会社の本店所在地と定款の本店所在地は同じか
  7. 定款の取締役の員数と登記事項証明書の取締役の員数が合っているか
  8. 取締役(監査役)が任期中であるかを確認
  9. 事業年度の定めが決算書、納税証明書の決算期と合っているか

 

会社情報を記載した書面には定款と登記事項証明書がある

会社の基本的な情報を記載した書面には、2つがあります。

その一つが、定款。

そしてもう一つが、登記事項証明書。

登記事項証明書というのは、通常、会社の謄本と呼んでいるもので、

法務局へ行けば誰でも発行してもらえます。

発行手数料が2017年5月現在は600円かかります。

 

この登記事項証明書(登記簿謄本)にも、

会社の商号、本店、目的、役員などの会社に関する情報が網羅されています。

それにもかかわらず、似たようなことを記載しているもう一つの文書があり、

それが定款なのです。

 

原始定款と変更後の定款

定款は、株式会社の設立時、一番初めに作られる際には、公証人の認証が必要になります。

会社設立時には、公証役場で定款を作るのです。

これを、原始定款といい、ここには認証した公証人の印鑑があります。

 

会社を運営していく中で、定款に記載されている事項が変更になることがあります。

商号=会社名を変えたり、取締役の員数を変えたり、

本店を隣町に移したり、目的に産廃業を追加したり。

そうなると、定款の変更手続が必要になります。

 

定款の変更は、株主総会決議によってなされます。

すると、これまでの定款というのは、変更前の定款であり、

新たな変更後の定款が必要になってきます。

この定款に関し、再度公証人の認証が必要かと言えば、

今度は必要ありません。

会社の代表取締役の印鑑だけでも、変更後の定款として有効な定款になるのです。

 

定款変更と変更登記

定款を変更した場合に、それが登記事項であれば、

登記手続が必要になります。

目的に「産業廃棄物収集運搬業」を加えたいとします。

株主総会決議により、目的が変更されます。

変更後の目的は登記事項ですので、法務局に目的変更登記を申請しなければなりません。

 

株主総会→変更後の定款→登記申請→変更後の登記事項証明書

という流れを経て、会社の定款と登記事項証明書の齟齬、不一致は解消されます。

逆に、会社の定款と登記事項証明書に不一致があるということは、

株主総会決議を経て、定款の変更が終わっているにも関わらず、

登記手続が未了の状態。

すなわち、登記懈怠(とうきけたい、すなわち登記忘れ)になっているという状態です。

 

現実には定款(紙)の変更もれが圧倒的に多い

ところが、申請の現場で現実に起こっている定款と登記簿謄本の齟齬のほとんどは、

このような状態ではありません。

逆に、登記だけが先に変更され、定款が古い状態のままなのです。

厳密には、定款は株主総会決議と同時に変更されています。

しかし、それを紙に表した書面=定款が、まだ存在していないのです。

 

株主総会議事録を作成すれば、変更登記手続は完了しますので、

(紙の)定款変更までしていないという会社の数がかなり多いのです。

それで、ほとんどの場合、問題は起きないようです。

問題が起きるとしたら、定款と登記事項証明書を同時に添付するような場面。

その代表例が、許可申請手続なのです。

産廃業許可申請手続の場面では、登記事項証明書と定款の内容の齟齬を指摘されるのです。

以下、定款のチェック項目を挙げてみます。

 

定款の目的と登記事項証明書の目的は同じか

定款にも登記事項証明書にも、会社の目的が列挙されています。

この目的は、登記事項の中でも頻繁に変更されるもののひとつです。

全く同じになっていなければなりません。

齟齬がある場合、上述の通り、原因は2通り。

  1. 登記がされていない
  2. (紙の)定款が変更されていない

ほとんどの場合が2でしょうから、登記事項証明書に合わせて定款を変更してください。

 

会社の本店所在地と定款の本店所在地は同じか

定款に定める会社の本店所在地は、最小行政区画まで定めればよいことになっています。

「当会社の本店は北九州市に置く」

と定款で定めれば、北九州市内のどこに本店を置いても構わないのです。

 

一方、登記される本店所在地は、具体的な地番まで記載することが必要です。

北九州市小倉北区◎◎1丁目1番1号

という風に定めなければなりません。

 

上記の例であれば、定款と登記事項証明書は齟齬はないのですが、

たとえば、定款には本店を北九州市内に置くとあるのに、

登記上の本店は福岡市内にある場合があります。

これも、ほとんどが、登記したけれども紙の定款の書き換え忘れということになるでしょう。

北九州市→福岡市への本店移転手続の際に、定款の本店所在地を株主総会決議で変更しているはずです。

それに合わせて、定款を書き換えることになります。

 

定款の取締役の員数と登記事項証明書の取締役の員数が合っているか

「当会社の取締役は3名以上とする」

という記載が定款にあるにもかかわらず、3年前に取締役が1名辞任して、

現在2名しか取締役がいないという会社が結構あります。

この場合、以下の方法を取るべきでした。

  1. 後任の取締役を1名選任する
  2. 定款の取締役の員数の規定を変更する

2は、たとえば、「当会社の取締役は2名以上とする」と書き換えることで問題は解消します。

許可申請時に定款と登記事項証明書の齟齬が見つかった場合には、

必ず齟齬を修正してから申請することになります。

 

取締役(監査役)が任期中であるかを確認

株式会社の取締役の任期は、現行法(2017.5)では最長10年です。

10年以上前に就任した取締役がまだ残っているということは、

その取締役は任期満了退任、及び就任手続をしなければなりません。

なので、10年以上前の役員がいれば、役員変更登記が必要になります。

 

法律上は役員の任期は10年が最長なのですが、

定款で10年より短い期間を定めている場合があります。

この場合は、定款に定めた期間で役員は任期満了していることになります。

変更登記を入れる必要がありますが、

今後のことを考えると、定款変更により役員の任期を伸長しておく方がいい場合もあるでしょう。

 

事業年度の定めが決算書、納税証明書の決算期と合っているか

決算期は、定款の記載事項ではありますが、登記事項ではありません。

登記事項証明書には決算期は載っていませんが、産業廃棄物処理業の許可申請の際は、

問題になります。

なぜかと言えば、許可申請書には、定款と同時に決算書、納税証明書を添付することになるから。

決算書や納税証明書で、会社の決算期は明らかになります。

これが定款の記載と異なれば、おそらく紙の定款の変更もれということになるでしょう。

 

(河野)