私は行政書士の立場から、廃棄物処理業界にかかわってきました。

行政書士として廃棄物処理の世界にかかわるというのは珍しいほうで、

大多数の廃棄物処理の業界人は、

事業者(処理業者)の立場として廃棄物にかかわっています。

また、プラントメーカー、大学や民間の研究者、環境コンサル会社など、

様々な立場の方々が、様々な専門知識を寄せ集め、

この廃棄物という世界にかかわっているわけです。

廃棄物処理の世界というのは、製造業や建設業と比較して、

比較的最近に市場形成されてきた、まだまだ未成熟な分野。

それでいて巨大市場なわけです。

現在、処分に困る廃棄物の代名詞に、PCBや石綿があります。

しかしPCBや石綿は、かつては非常に便利で安価で有用なものとして、

市場に登場してきました。

当時の社会では、PCBや石綿を処理・リサイクルするという観点が皆無だったわけです。

そうである以上、

PCBや石綿を無害化したりリサイクルするという市場は絶対に成り立ちません。

もちろんPCBや石綿だけではなく、当時ほとんどの廃棄物がそうであったことでしょう。

政治的、あるいは国際的なコンセンサスによって、

わが国の法律がもはや公害問題ではなく環境問題を対象にするようになり、

その結果、環境という新たな市場が形成されてきたのです。

社会がこの環境問題に対処するには、

もはや子どもたちへの情操教育程度で対処することは不可能です。

環境を消費することは、企業の利潤を蝕む。

企業が利潤を生みだすには、環境への配慮が必須。

新たに生み出された環境という市場は、

私にはまるで雄大な山のように見えてきます。

廃棄物処理=リサイクルに関する世界を「極める」のは、

登山のような世界ではないかと思います。

山頂は一つですが、その山頂へ至るルートは様々ですし、

道中の景色も異なることでしょう。

しかし、目指す頂、たどり着く場所は一つなのではないだろうか、と。

先日、北海道の某所で、廃棄物処理施設の実証実験の現場に立ち会いました。

亜臨界水を利用して、有機性廃棄物を処理するという実験です。

亜臨界水というのは、高温高圧(200℃20気圧)、超臨界の手前の水です。

亜臨界状態の水は、有機物の分子の結合を分断する作用があり、

これによって有機物の分解が可能になります。

今回実験したプラントでは、廃棄物処分業の許可を持っていませんでしたので、

本物の廃棄物を投入することはできません。

そこで、まだ食べれる食品や、着れる衣類、飲める水、未使用の紙おむつなどを投入し、

有価物で実際の廃棄物の組成を再現したものを処理する、という実験でした。

今回の記事では詳細は書きませんが、亜臨界水処理は焼却炉の代替技術なのです。

この実験に際し、私を含めてたくさんの人が視察に訪れました。

南は沖縄から、北はロシアまで。

初日の実験の後には、ススキノでの交流会に参加しましたが、

各自治体の環境行政担当者、処分業者、

プラントメーカー、環境コンサル、

大学や企業の研究者、農家など、

多くの専門家が、この実験に集まっていました。

農家がなぜ?

と思う方がいるかもしれませんが、彼は農業をしながら、

亜臨界水処理後物の農業利用の道を模索しているのです。

廃棄物処理業は、技術だと私は考えています。

技術の先に、廃棄物処理の世界の「山頂」があるのではないかと。

私にはまだまだ頂は見えてきませんが。

私が考えているのと同じように、廃棄物処理技術に注目している方々が、

今回の実験のために、このプラントに集まりました。

皆さん様々な立場でありながら、この技術に注目しているのです。

同じテーブルで酒を飲んでいても、話をすることは廃棄物処理について。

それぞれの立場からいろんな意見を出し合うことは、

私にとって非常に刺激的な時間でした。

そして、まだまだこの廃棄物処理の世界は物凄いスピードで技術開発が進み、

花形産業であり続けるのではないか、と感じています。

(河野)