当事務所は、現在(2019年1月時点)、約20名の廃棄物処理専門の行政書士事務所として運営をしています。
人数も少しずつ増えてきまして、2003年の創業以来、今が最多となりました。

当事務所では、廃棄物に関しての素人を採用し、社員教育によって廃棄物のプロに育成する、という人材育成方針を掲げています。
廃棄物処理施設での実務経験や環境行政の経験者が入社してくることは全くありませんので、本当に「1」から廃棄物処理について教育していきます。

私どもの事務所でも、新入社員への教育は非常に重要なものとなっておりますが、おそらく廃棄物処理業者にとっても、新入社員に対する廃棄物の知識を教育するのは課題なのではないでしょうか。
今日は、廃棄物処理業者の新人教育(主に廃掃法に関すること)について記事にしてみます。

ある収集運搬業者の中堅社員が、こんなことを言ってました。
「作業員の多くは、自分たちが運んでいる廃棄物が産業廃棄物なのか、一般廃棄物なのか、よくわかっていない。」
これは、廃棄物処理業者としては、非常にリスクの高い状態と言えるのではないでしょうか。

また、営業社員であっても、収集運搬の許可を受けた品目に含まれていないものを運搬する委託契約を締結しかけていた、なんて話も耳にします。

廃棄物処理は、法律上の規制を受けています。
この法律は企業経営に大きなリスクを与えているわけですが、そこで一番恐ろしいのが、従業員の無知なのです。
廃掃法の知識の欠如は、企業経営を窮地に陥れる可能性をはらんでいるのです。

以上の理由で、非常に重要度の高い廃掃法に関する従業員教育ですが、この教育がなかなか難しい。
というのが、そもそも廃掃法自体が相当に技術的で難しい法律のため、経営者やベテラン管理職でさえ、実は理解できていない、というのが実情ではないかと思います。

社員教育する立場にある人がよく分かっていなかったら、新入社員に対する教育成果もなかなか上がってこないものです。
特に長年の経験と感覚で廃掃法を理解されている方は、法律の条文に即した教育をすることが難しいと思われます。

このような処理業者の抱える悩みが私にはよく理解できます。
なぜなら、当事務所でも新人が入ってくるたびに、私が自ら廃掃法の基礎知識についての講師をしているからです。

毎回、「産廃なんて見たこともない」という素人相手に、講師をします。
廃棄物とは何か?
廃棄物か有価物かの判断基準は?
産業廃棄物と一般廃棄物の違いは?
事業系一般廃棄物と産業廃棄物の違い
業種指定とは?
など、基礎の基礎から何度も同じ話を繰り返してきました。

処理業者が従業員教育を行うとしたら、どのような方法がいいのか。
もちろん、私のように従業員教育専任の社員を育成する、というのも一つの方法です。
しかし、それが難しいようであれば、各種の講習会を活用するのがよさそうです。

ここで、いくつかの講習会を紹介しておきましょう。

1.産業廃棄物処理業の許可申請に関する講習会

産業廃棄物収集運搬業や処分業の許可申請をする際に必要な講習会です。
私も受講しました。
ここで使うテキストは、当事務所でも実務の必携書になっています。
実務に携わる作業員が受講しても意義のある講習会と言えます。
なお、最後に試験があります。
たまに不合格の人もいますので、講習中も気を抜けません。

2.産業廃棄物処理実務者研修会

1日で行われるコンパクトな講習会です。
当事務所の従業員も受講しました。
私はテキストを読んだだけですが、このテキストの内容は、当事務所の社員研修に生かされています。

3.廃棄物管理士講習会

大阪周辺の事業所にお勧めしたいのが、廃棄物管理士講習会。
私は今のところ受講実績がありませんが、この廃棄物管理士講習会を事業化したという龍野浩一氏の著作は非常に役に立ちましたので、講習会の方も期待してよいのではないかと感じています。

他に、廃棄物処理施設技術管理士講習というものもありますが、こちらは新入社員教育としては、ちょっとハードルが高すぎます。

私自身は、廃掃法に関しては、講習会よりも独学で勉強をしてきました。
私の場合、たまたま法学部卒で行政書士だったという経歴があり法律の条文が苦にならなかったのですが、廃掃法学習のお勧めはやはり条文集です。

廃棄物処理法令(三段対照)・通知集 平成30年

廃棄物処理法法令集 平成30年版―三段対照

三段対称の条文集は、法律、施行令、施行規則を同時に眺めることができるので、大変重宝します。
それと同時に、この本は大変分厚いまるで電話帳みたいな本です。
廃棄物処理法の重厚さを感じることができるのです。

廃掃法の概要をさっと理解する本はないのか?
と聞かれれば、色々本屋に並んではいますが、講習会を受けた方がいいのではないか、と感じています。

廃掃法をより深く理解するための本はないのか?
と聞かれれば、条文や通知に向かい合って格闘するしかない。
これが私の感覚です。

(河野)