今日は廃棄物処理施設の機械メーカー様にも向けた記事を書いてみます。

少々長くて記事の性質上内容が難しいかもしれませんが、

お付き合いいただければ幸いです。

 

私自身、機械メーカーの方から廃棄物処理に関する技術に関して、

様々なことを教えていただきました。

 

特に廃棄物処理に関する技術は近時物凄い勢いで進歩していますので、

この技術の進歩に取り残されてしまってはならない、

という私の思いもあり、積極的に見学や勉強をさせてもらっています。

 

廃棄物処理のための機械に関しては、

沢山の中小の企業が様々なアイディアを巡らせながら、

新しくて面白い製品を開発している分野であると感じています。

 

例えば、食品残渣を処理する機械。

食品残渣に関しては、焼却、発酵(堆肥化)、亜臨界など、様々な処理方法があるでしょう。

古くは焼却ですし、現在も一般廃棄物の生ごみの多くが焼却されています。

 

もちろん、焼却せずに再資源化できればその方がいい。

そこで様々な技術開発がされていくわけです。

発酵させて、メタンガスで発電させる方がよいという考え方が欧州から広まり、

日本にも各地にメタン発酵施設ができています。

もちろん、メタン発酵はまだ「一般的」とまではいかないでしょうが。

 

メタン発酵にも様々な問題があるのですが、

ここで一つ例をあげると、食品残渣としてメタン発酵をさせる場合は、

事前に容器包装(プラ・紙・金属)を分離させなければならない、ということ。

 

一般廃棄物の生ごみ処理として自治体がメタン発酵を導入しようとする場合には特に、

この分離のコストが問題になってくるわけです。

一般廃棄物は産業廃棄物と比べて、性質はミックスですから。

産廃処理なら一般廃棄物ほどではないでしょうが、やはり容器包装の分離コストは重要でしょう。

手分別なら焼いた方がいいかもしれません。

そこで、容器包装を分離するための機械の必要性が出てくるわけです。

 

或いは、プラや紙の分離を不要とする亜臨界水処理は、

メタン発酵施設の抱える問題に対するもう一つの解答ということになるでしょう。

亜臨界水処理ならば、容器ごと反応槽への投入が可能です。

メタン発酵が抱える課題のひとつを、亜臨界水処理という技術はすでに解決済だということになります。

 

近年、廃棄物処理の技術の多様化に伴い、それに付随的に必要な技術はさらに広範に。

廃棄物処理に関する技術は、

地球規模でまさに今が革命期(産業革命とかIT革命と同様の意味)であるように私には思えます。

 

そういった中で、廃棄物特有の難しさ(法規制)が技術に制限を及ぼしている、

とも感じてしまうのです。

廃棄物処理は特に法律によって規制されており、

ただ「いいもの」「いい技術」というだけでは市場に流通しません。

いいもの、いい技術であり、なおかつ法律にも市場経済にも配慮したものでなければ、

製品も技術も広がっていかないのです。

 

 

新しい廃棄物処理の技術を見たときに私は、

その技術で廃掃法上の許可を取得することを考えます。

これは、職業病というやつです。

 

もちろん、許可を取得せずに廃棄物の処理施設を運用する、

という方法も考えられます。

  1. 15条許可の対象外の処理施設
  2. 自社物のみを扱うことで14条許可の対象外
  3. 廃棄物ではなく有価物としてその有価性を証明

 

許可不要の場合について少し書いてみます。

15条許可は施設設置許可というもので、これは廃棄物処理施設を設置するのに必要な許可です。

これが不要な場合とは、15条の許可の対象施設でない廃棄物の処理施設を設置する場合。

ここが非常に難しい。

 

「廃棄物の処理施設」と「廃棄物処理施設」は厳密には異なる、

ということが著名な環境法学者の著書に書いていました。

具体的には、産廃なら廃掃法15条の許可が必要な施設が「廃棄物処理施設」でして、

廃掃法15条の許可が必要かどうかに関わらず、

廃棄物を処理できる施設が「廃棄物の処理施設」ということです。

 

我々のように廃棄物処理の許認可に携わる専門家にとっては、

これは非常に頷ける分類方法なのですが、

一般の方にはこれはちょっと分かりにくい分類なのではないかと思います。

 

ここで分類についての詳細は書きませんが、

要は「廃棄物の処理施設」の中には、

①廃掃法上の許可が必要な施設と

②廃掃法上の許可が不要な施設がある、

ということになります。

 

つまり、上記①に該当すれば廃掃法15条の許可が必要ですが、

②に該当するのであれば無許可で廃棄物の処理施設を設置できることになります。

 

次に14条の許可が不要な場合について。

産廃では上記に述べた廃掃法15条の施設設置許可以外にも、

廃掃法14条の処理業許可というものがあります。

 

先ほどの①廃掃法15条の施設設置許可が必要な施設だったとして、

他社の廃棄物を受け容れることなく自社物のみを処分する場合には、

施設設置許可=廃掃法15条の許可のみあれば廃棄物を処分可能です。

 

たとえば…

自社で排出したがれきを破砕する場合、

自社で排出した汚泥を脱水する場合。

これらは、施設設置許可を有していれば、処理業の許可がなくても中間処理をして構いません。

 

このように、非常に大雑把に申し上げると、

廃棄物の処理(中間処理)には、許可が必要なものと不要なものがあるのです。

許可が不要な場合であれば、無許可で廃棄物を処理していると言っても、

決して違法なことをしているわけではありません。

 

最後に有価物として許可が不要な場合について。

処理のために受け入れているものが廃棄物であれば、それは廃棄物処理ですが、

有価物を受け容れて加工しているとすれば、それはもはや廃棄物ではなく原料という扱いです。

有価性を証明することが可能であれば、仮にそれが廃棄物に見えるものであったとしても、

廃棄物処理施設の許可も廃棄物処理業の許可も不要、ということになります。

 

廃棄物処理を行う企業にとって、

15条(施設許可)にせよ14条(業許可)にせよ、

許可が必要となれば、

許可申請手続やそれに伴う様々な手続き、時間、

それに許可要件を整えるための設備の購入や工事など、

様々な障壁があります。

 

もしも許可が不要であるとすれば、これらの障壁を回避できるわけですから、

実際に処理を行う企業としては当然、許可不要な方が好都合でしょう。

処理を行う企業が許可不要な処理を望むとすれば、

廃棄物の処理施設(焼却炉・破砕機等)の製造メーカーとしても、

そちらの機械を開発・製造・販売したいと思うわけです。

 

ここに私は、本質的な問題があるような気がしてなりません。

許可を取得して運用する、というコストを一度も数値化することなく、

許可取得を回避する道を選択する、という経営判断がもしあるとすれば、

もしかしたらそれは大きな機会損失になっているかもしれない、ということです。

 

事前に許可申請にかかるコストをある程度数字として見積もる。

その上で、許可取得を回避する道を選択する。

或いは許可を取得する。

それが、正しい在り方なのではないか、と私は考えています。

 

記事の冒頭に機械メーカー様にも向けて、ということを書きました。

私は様々な製品や技術と接する中で、

この製品や技術で廃掃法の許可を取得できればどんなに面白いだろうか、

と感じてしまうのです。

 

もしも漠然と廃掃法の許可を避けているのであれば、

一度私とお話しさせていただければ、

許可を取得して廃掃法上の処理施設として、

或いは処理業として、

その製品・技術を未来に生かす見取図を示すことが可能かもしれません。

 

(河野)