廃棄物処理業界と人材雇用確保

廃棄物処理業の経営者に話を伺うと、必ず出てくる悩み事。

人手不足という問題です。

今日は、難しいテーマだとは分かっていますが、

廃棄物処理業界に常につきまとう人手不足、

雇用確保の問題に焦点を当ててみたいと思います。

この記事の目次

  1. 廃棄物処理業界はいつも人手不足
  2. 潜在的な労働者層にとっての劣悪なイメージ
  3. 誰にもできる仕事だからこそ、人材の流動が激しい
  4. 労働者が選択できる別の仕事との比較で不利
  5. 差別化が難しい業界の行きつく先は価格競争、しわ寄せは賃金
  6. では、どうすれば廃棄物処理業界に人が集まるのか?
  7. 従業員教育を疎かにしてはならない

 

廃棄物処理業界はいつも人手不足

当事務所の所在地は広島市ですが、

広島のハローワークの情報をいつ見ても、必ず廃棄物処理業者の求人が出ています。

 

廃棄物処理業者はなぜいつも人手不足なのでしょうか?

廃棄物処理業の中でも、一般廃棄物処理業と産業廃棄物処理業があります。

 

それから、収集運搬業と処分業という区分けもあります。

一般廃棄物の収集運搬業者が、特に人手不足に悩んでいるように感じます。

 

廃棄物処理業がいつも人手不足に悩む原因を挙げてみたいと思います。

そして、その解決方法を示す、とまで大きなことは言えませんが、

「では、どうすればいいのか?」についても書いてみたいと思います。

 

潜在的な労働者層にとっての劣悪なイメージ

経営者には、廃棄物のリサイクル業に対して、明確な将来性やビジョンを掲げられる方が多いでしょう。

しかし、労働者層にとっては、廃棄物処理業といえば、

「なんだ、ゴミ屋か」

という認識を持っている人が多いと思います。

 

仕事に対しても、きつい、汚いというイメージが先行し、

労働者層からの応募の障壁になっている事実はあると思います。

それから、過去に記事にしましたが、

「産廃業界はヤクザがらみ」と思っている方もいたりします。

 

誰にもできる仕事だからこそ、人材の流動が激しい

廃棄物処理業を「誰にでもできる仕事」だと言うのは正直とても心苦しいものですが、

少なくとも、ハローワークの求人レベルでは、特別なスキルが求められていることは稀です。

 

労働市場としても、労働者側も新規参入が容易。

つまり、ド素人が入社してきても、先輩従業員とほぼ同等の待遇になってしまうことも。

廃棄物処理業に携わる従業員の離職率の高さの要因になっているのではないでしょうか。

 

労働者が選択できる別の仕事との比較で不利

廃棄物処理業は誰にでもできる仕事だ、とさきほど書きました。

これは会社側からの目線でして、従業員側からの目線にシフトしてみます。

従業員も、誰にでもできる、自分が採用される仕事は、他にもたくさんあると思っています。

その中の代表例が、建設業と運送業ではないかと思います。

 

建設業や運送業と比較して、廃棄物処理業はイメージも悪く、

それでも従業員を繋ぎとめるだけの方法としては、高賃金しかないのかもしれません。

ところが、廃棄物処理業は、建設業と比較すると賃金は低い。

運送業と比較しても、低いかもしれません。

 

そこには、賃金を簡単に上げれない事情があります。

 

差別化が難しい業界の行きつく先は価格競争、しわ寄せは賃金

どの業界もそうですが、製品やサービスの差別化ができないコモディティ化した商品市場では、

激しい価格競争が展開されます。

いわゆるレッドオーシャン。

その代表例が、廃棄物収集運搬業ではないでしょうか。

 

廃棄物を運ぶという仕事に対して、付加価値をつけることが性質上大変難しい。

「どこのゴミ屋に収集を頼んでも、結果は変わらない」という消費者の感覚。

顧客が市場でサービスを選ぶ唯一の基準が価格になり、業者の価格競争を煽ります。

 

価格を下げるにしても、廃棄物の収集は人の手で行わなければならず、

人件費コストを下げていくしか利益を残す道がない、ということに。
廃棄物処理業のイメージや潜在的労働者層の性質、他業種との比較

そして業界を取り巻く構造(価格競争の激しさ)と人の手の仕事という性質こそが、

廃棄物処理業界に人材不足を招いている原因ではないかと私は分析しています。

 

では、どうすれば廃棄物処理業界に人が集まるのか?

多くの廃棄物処理業界のリーダー企業が、

業界のイメージアップに取り組んでいる姿も私は見ています。

 

きれいなパッカー車、収集運搬作業中の地域住民への挨拶、

安全運転、ボランティアの清掃活動、会社事務所の美化。

こういった活動が、業界全体のイメージアップにつながっていくことでしょう。

 

イメージアップの一環として、各企業も作業員の制服にはこだわって欲しいと思っています。

デザインも、いかにもゴミ収集作業員みたいなものではなく、洗練されたものを選んでほしい。

50代の作業員にとっては、

「制服が若々しすぎて、ちょっと恥ずかしい」

くらいのがいいですね。

当然、清潔に。

 

従業員教育を疎かにしてはならない

それから、この業界は従業員教育を疎かにしてきたように私は感じています。

何年も廃棄物を収集しているのに、この紙くずを運ぶのに、

一般廃棄物の許可が要るのか、それとも産業廃棄物の許可が要るのか、無許可で運べるのか?

も作業員が分からない、という声を聞いたことがあります。

 

廃棄物に対する知識だけではなく、しっかりとした従業員教育を施していくことで、

従業員の定着も図れるのではないかと期待しています。

 

最後に、中間処理業に関しては、収集運搬と違い、サービスを差別化をすることで、

コモディティ化から抜け出せるのではないかと私は考えています。

時代にマッチした新しい差別化された中間処理が、

価格競争からの脱却につながっていく可能性を感じています。

 

(河野)