「産廃屋は、これがゴミにしか見えないから、全部まとめて破砕するんだよ。
俺達にはこれが資源、製品の材料に見えるから、こうやって徹底的に破砕前に分別してるのさ。」
私が彼の経営する工場に訪問したのは数年前。
そこは、あるひとつの品目の産業廃棄物に特化した破砕施設でした。
持ち込まれる産業廃棄物も、破砕機も、何の変哲もないもの。
しかし、そこから生み出される【価値】は、常識からは考えられないほど高いもの。
価値を生み出すことが企業経営であり、生み出す価値こそが我が国の経済の源泉です。
とんでもないものを見てしまった・・・
全国の産廃業者を訪問しましたが、こんな衝撃を受けたのは初めてでしたし、
日本のモノづくりの基礎を支える廃棄物処理技術の凄さというものを、
まざまざと実感させられました。
その工場では、廃棄物を破砕処理することで、有価物を生産しています。
そんなことはどこの中間処理場でもやってることで、
有価物売上は、中間処理業の売上の柱のひとつと言っても過言ではありません。
ところが、この工場では、有価物売上を経営戦略上の重要な要素と捉え、
破砕前の廃棄物を徹底的に分別していたのです。
「どこの産廃屋も、○○(品目)は○○、同じように破砕機にかけているよ。
でも、うちは全然違うんだ。
リサイクルされて生み出される製品は、
同じ●●(製品)といっても、用途によって全然違う性質になる。
その製品にとって最高の品質の原料を作ってるんだから、
破砕前選別にこだわるのは当たり前だろ。」
彼は、廃棄物を処理して出てきた有価物を売ってるのではない。
最高の有価物を生産するために、廃棄物を受け入れていたのです。
彼の生産する原料は、普通の産廃業者が生産する有価物よりも圧倒的に高品質なため、
リサイクル製品の製造メーカーは高値で購入してくれるのです。
しかも、これを特別な機械や設備を使用することなく、
彼の「職人としての目利き」のみでやり遂げてしまう。
「なんで、よその産廃屋も同じようなことをしないんですかね?」
私の質問に対して、彼の回答は明快。
「産廃屋には、マネできないよ。
みんな、有価物がそのあとどうやって資源化されているのかなんて考えてもない。
俺は何十年も、メーカーで●●の原料を選定する技術者だったんだ。
作り手だったから、メーカーが求める最高の原料が分かるんだ。
それから、うちで作った原料は日本中の製造業者の中で、
最も高値で買ってくれそうなメーカーに卸してる。
同じ●●製造と言っても、メーカーや工場によって得手不得手があるから。
そんなのも知り尽くしてないと、このビジネスモデルは成り立たない。」
彼は、まったく新しい価値観で産業廃棄物処理業界に参入していました。
処分費もらって処理して、処理物に処分費も払ってマイナス、有価物で売れればプラス…
みたいな従来の産廃屋の発想では、
今後市場シェアを奪われていくんではないかと、私は危惧しています。
少なくとも彼は、自分が「産廃屋」だとは、毛頭思っていないのです。
(河野)
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