今回の出張も全国の自治体を色々と訪問し、収集運搬業の許可申請をしてきたのですが、

その中でちょっとびっくりした「品目の取り扱いの変更」についての記事を書いてみます。

 

2017年10月現在、日本全国の自治体では、水銀がトレンドです。

今から10年くらい前だったか、

かつて「石綿含有産業廃棄物」というものが登場したときと似たような混乱が、

今の全国の自治体の窓口に起こっています。

水俣条約という水銀に関する条約により、収集運搬業の申請手続や処分業そのものにも影響を与え、

それを自治体や顧客を通じて、実感しております。

 

水銀含有産業廃棄物に関する記事を書きたいところなのですが、

取り扱いを変更したばかりで、私自身もまだ理解できていないところも多いため、

もう少し情報が蓄積・整理されてきた段階で水銀を記事にしてみたいと思います。

 

今回は、水銀ではなく、私のブログで何度も記事にしているカッター汚泥について、

埼玉県庁の窓口で聞いた話を書いてみます。

 

まず、カッター汚泥というのは、

コンクリートやアスファルトをカッターで切断した際に排出される汚水というか、廃液というか、

そういったものです。

かつては、このカッター汚泥は、土木工事現場から公共用水域に垂れ流されていました。

 

その後、カッター汚泥に関して、有害性の指摘がされます。

特にアスファルトカッター汚泥は、有害物質が含有されているのではないか。

産業廃棄物として適正に処理がなされるべきだ、という指摘でした。

誰が指摘したのか、というと、私の記憶ではマスコミや学者だったように思いますが、

私の昔の記憶なので、そこは自信があまりないです。

 

そういった中で、

カッター汚泥を産業廃棄物として適正に処理しなさい、

という行政による指導が開始されました。

 

さて、このカッター汚泥。

産廃としての品目は何なのか?

その性状から、汚泥ということは疑いがないのですが、

コンクリートもアスファルトも、水をアルカリ性にする性質があり、

カッター汚泥は、かなり強いアルカリ性を示すのです。

 

私自身、カッター汚泥を分析にかけたことがあります。

そのときpHは、約12。

かなり強い、特別管理産業廃棄物の腐食性廃アルカリに近い数字が出ました。

 

カッター汚泥が産業廃棄物として取り扱われて以降、

一早くその品目としての取り扱いを「汚泥 廃アルカリ」としたある自治体に習い、

当事務所としても、これまでカッター汚泥は必ず「汚泥 廃アルカリ」として許可を取得してきました。

 

ここからが本題。

実は、今回の埼玉県の収集運搬業の申請に際して、窓口で以下のような指摘を受けたのでした。

「埼玉県では、産業廃棄物がどの品目に当たるのかの見直しをした結果、

カッター汚泥は廃アルカリとしては取り扱わなくなりました。」

 

これまで、汚泥・廃アルカリとして取り扱っていたカッター汚泥は、

今後、埼玉県では汚泥として取り扱えばいい、ということになります。

 

解釈によって品目が変わってしまった、ということになりますが、

収集運搬業者は、埼玉県の収集運搬業許可を取得する際にも、

カッター汚泥の運搬可能性がある場合には、必ず廃アルカリも取得した方がいいと思います。

その理由は、以下の2点。

 

  1. 他県からのカッター汚泥の持ち込みの場合、廃アルカリの許可を持っていないと運搬できない可能性がある
  2. 行政側がカッター汚泥に廃アルカリの許可は不要としても、排出事業者は廃アルカリの許可を持っていない業者には運搬させない可能性がある

 

1については、他県で廃アルカリと判定されているものを、埼玉県に持ち込んで汚泥として取り扱うというわけにはいかないでしょう。

2は、たとえば動物系固形不要物の運搬に収集運搬業の許可を不要としている自治体であっても、

排出事業者はリスクを恐れ、許可業者にしか運搬させたくないと考える企業が多く、

それが普通の企業の感覚だと私は感じます。

カッター汚泥に関しても、廃アルカリを持っていない業者には運搬させたくないと感じる処分業者はいるでしょう。

 

最後に、なぜ埼玉県はカッター汚泥の収集運搬に、廃アルカリの許可を不要としたのかに関して、

私の勝手な予想を書いておきます。

たしかにカッター汚泥はpHの高い液体ではありますが、

現実には廃アルカリとしての処理(中和等)をされていません。

汚泥を凝集させたり脱水したりしてます。

また、実際に廃アルカリの処分業許可を持たずに、長年カッター汚泥を受け入れている中間処理場もあります。

 

中間処理業で廃アルカリとしての処理をしていない、

あるいは廃アルカリを持たずにカッター汚泥を処理している業者が存在する中で、

収集運搬業だけに廃アルカリを求めるというのも、バランスを欠いているのではないか。

これが、埼玉県がカッター汚泥の収集運搬に廃アルカリに廃アルカリを求めなくなった理由ではないか。

というのが、私の勝手な予想です。

 

(河野)