先日、偶然ある収集運搬業者の方とお会いして酒を飲みながら世間話をしました。
お仕事の話を色々と聞かせていただいたのですが、
収集運搬業は「物流業」であるということを再認識させられました。

取り扱うものが「商品」ではなく「廃棄物」だというだけで、
収集運搬業が物流業の面があること自体は否定しようがない事実です。
ただし、物流業と収益構造はやや異なります。
委託契約の構造がどうであれ、

(収集運搬業者の利益)=(排出事業者から受けた金額)-(処理業者へ支払う処理費)

という引き算です。
収集運搬業者の方からは、「いかに安く廃棄物を処分するか」が重要である、
とお話いただきました。

それはもっともです。よく分かります。
しかし、そこだけを見続けていくと、
収集運搬業は業界として疲弊し続ける運命を辿ることになりはしないか。
私にとっては、そこが大変気掛かりになったわけです。
業界の疲弊は、不法投棄の温床にもなります。
私の知る不法投棄事件の多くは、廃棄物の不適正処理で大儲けという話よりは、
処理費が出せずに不適正処理というケースなのです。

「いかに安く廃棄物を処理できるか」という収集運搬業者の至上命題があり、
その一方、逆に安く処理できない廃棄物もあります。
石膏ボードであったり混合物であったり、
他にも色々考えられるでしょうが、
現在(2019年3月)もっとも旬なのは、廃プラスチック類の処理問題でしょう。

過去に私も記事「中国発、廃プラの有価性を揺るがした波と今後の展望」にしていますが、廃プラは2017年の中国の輸入規制により、有価物としての価値が急落しました。
現在、日本国内に廃プラが溢れているのは、廃プラの処理費が高いのが理由に他なりません。

以下、冒頭の収集運搬業者と私の会話を、少々脚色を加えながら再現します。

私「廃プラの処理単価が上がったのは何故だかご存知ですか?」
収運業者「中国が受け入れないからですね」
私「それでは、なぜ中国は受け入れを拒否したかはご存知ですか?」
収運業者「え、そんなこと考えたこともなかったです」
私「中国国内には、これまで日本からの廃プラを受け容れていた企業や工場があるはずですが、現在は何をしてると思いますか?」
収運業者「処分場への持ち込みの後に関しては、全然わかりません」

以上のようなやり取りがあり、私は「収集運搬業は物流業」と実感した次第です。
私にとってここで「物流業」と対置する概念は、「廃棄物処理業」です。

廃棄物処理業とは、収集運搬業と処分業を包含する概念です。
この定義からも、収集運搬業者はもれなく廃棄物処理業者であるはずなのですが、
収集運搬業を専門とする業者にとって、廃棄物処理業という側面が弱く、
廃棄物というものを取り扱うという点で特殊な物流業になっている、と感じられるのです。

収集運搬業を物流業と定義すると、
廃棄物処理=資源リサイクルという重要な面が相対化されてしまいます。
この廃棄物の資源リサイクルは、技術次第、方法次第で差別化が可能です。
一方、物流業での差別化は大変難しいと言わざるをえません。
物が廃棄物であろうが、誰が運んでも同じという差別化困難な側面は、どうしても否定できません。

収集運搬業は、未来に向けて無限のビジネスチャンスに満ち満ちている「廃棄物処理業」として捉えるべきであって、
コモディティ化された「物流業」として捉えるべきではない、というのが私の思想です。

廃棄物処理業を物流業と捉えるのは、結局「ただ処理費が安い方」に流れていくわけで、
それは業界を疲弊させてしまうことなると考えます。
(なお、商品を運搬している本来の物流業の方は、インターネットでの通信販売や個人売買という市場の拡大の結果として、市場規模はこの十年間拡大し続けています。)
産業廃棄物収集運搬業の場合、都道府県の出す業許可は、
参入規制としては余りにも低いもので、許認可だけに頼って商売をすることはまずできません。
要件さえ満たせば誰でも産業廃棄物収集運搬業者になれるわけです。

収集運搬業を、ただ廃棄物を処分場に運搬するだけの仕事だとみてしまうと、
「廃プラの相場が下がった」という事実しか感じられません。
しかし、廃プラの相場の変動の裏側にある国際レベルの社会的・経済的な事情が見えてきたときに、
廃プラの世界における廃棄物処理業という産業構造がいま、大きく変遷しようとしている分岐点に立っているということを身をもって感じ取れるのではないかと思います。

ここから先、方法次第で先行者利益を獲得できる大きなチャンスが誰にでもあると私は思うのです。
もちろんここから先は、知るか知らないかと、やるかやらないかが、商売として成功するかどうかの分かれ目になるとは思いますが。

ここまで私の持論について少々熱く書いてきましたが、
ぜひとも多くの廃棄物処理業者(もちろん収集運搬業者も処分業者も、産業廃棄物処理業者も一般廃棄物処理業者も)には、
「知る」という行動を意図的に取っていただきたいと思っています。
廃棄物処理の最先端を知る絶好の機会が今月(2019年3月)にありますので、
ここで勝手に宣伝させていただきます。

アジア最大の環境展
2019NEW環境展

今回で28回目の開催。
私も開催期間中は東京オフィス勤務日なので、
行ける日には各ブースに顔を出そうと思っています。
もし私を見かけた際には、ぜひ遠慮なくお声がけください。
ときどき「ブログ読んでますよ」と声を掛けられることが、私のモチベーションでもあります。

(河野)