当事務所では、産業廃棄物処理業の許可申請手続と、

一般廃棄物処理業の許可申請手続の両方を行っています。

産廃業者、一般廃棄物業者、そして産廃一廃兼務の業者と、

沢山の廃棄物処理業者とお付き合いさせていただいています。

2016年7月末段階(記事執筆時に最新)のデータベースによると、

日本全国734社の許可の管理をしているということになります。

 

産業廃棄物と一般廃棄物の違いは、何度か記事にしてきました。

一般市民になじみ深い廃棄物といえば、一般廃棄物です。

しかし、日本国内で排出される廃棄物の約80%は、

産業廃棄物で占められています。

とはいっても、産業廃棄物の中には、

「汚泥」や「動物の糞尿」というちょっと特殊なしかも比重の大きな産廃品目の割合が多く、

そういったものを除けば、廃棄物に占める産業廃棄物と一般廃棄物の割合は近くなるでしょう。

 

産廃業界と、一廃業界では、

市場における「脅威」は異質だと感じます。

同業者間の競争の激しさを比較すると、

産廃業界の方が激しいように感じます。

 

また、産廃業界は新規参入が一般廃棄物業界よりも容易といえるでしょう。

廃棄物処理業の参入障壁には様々なものがありえますが、

その中の一つが、許可です。

一般廃棄物収集運搬業の許可は、そもそも新規で許可を下していない自治体がかなり多いです。

許可自体が、行政が儲けた参入障壁のように見えてしまいます。

 

これは、純粋な市場競争が一般廃棄物処理業界には馴染まない、という判断だと思います。

業界が過当競争になることで、

どの企業も最低限事業を存続させるだけの収益を上げることが難しくなり、

企業が一般廃棄物処理業界から収益が得られないという理由から撤退することで、

結果的に市民サービスが低下するということなのではないか、と思っています。

かつてのアメリカの航空業界で、規制緩和により競争過多になり、

政府が介入して、業界の収益性がやっと改善した、という話を聞いたことがあります。

 

私自身は、政府による市場への介入に懐疑的ではあるのですが、

現在の制度がこうなっている以上は、致し方ありません。

 

とはいいましても、当事務所がある広島市の状況をみても、

事業系一般廃棄物の収集運搬など、相当に激しい市場競争に晒されている、といっても過言でなさそう。

廃棄物というのは、ユーザーからしてみれば、

「目の前からなくなってくれればそれでいい」

と考えがちです。

そうなると、製品差別化がなかなか難しい。

結果として、

「おたくは幾らでやってくれるん?」

という価格だけの話に落ち着きかねません。

 

目の前からなくなってくれればそれでいい、という発想に、

廃棄物処理問題の大きな落とし穴があります。

通常の商取引は、商品とお金の交換により成り立ちます。

ところが、廃棄物処理というのは、

商品(ゴミ)とお金が同じ方向に移動するのです。

 

ここに先ほどの商品差別化が困難という条件が重なることで、

不法投棄の温床を作ってしまうことになります。

一般廃棄物処理業の許可を行政がなかなか下ろしたがらない理由も、

この辺にあるのじゃないのかな、と私は感じています。

 

産業廃棄物処理業よりも、行政の規制に守られているはずの一般廃棄物処理業も、

競争過多で市場での収益維持はギリギリのラインだったりします。

それに比べると、産業廃棄物中間処理業にはまだまだ差別化の余地が残されているように思えます。

 

(河野)