今回の記事は、当事務所のある広島市を題材に書いています。

自治体ごとに一般廃棄物の委託のルールは様々でして、一応に論ずることは難しいです。

しかし、一般廃棄物処理業の入札による委託事業の「企業経営における危険性」というのは、

ある程度共通しているのではないかと思います。

1本の委託事業を1社だけが入札できるような世界であれば、そこは楽園かもしれませんが、

少なくとも広島市の入札に関しては、決して楽園とは言えないような環境。

 

広島市の一般廃棄物処理業の許可は、新規に取得するのが非常に難しい状態です。

ですので、一般廃棄物収集運搬業の許可数はほぼ増えることがなく、

減ることもなく横ばいしていくことになります。

この許可業者が一斉に集うのが、

年に1度の広島市委託事業(一般廃棄物収集運搬業)の入札。

 

委託事業に頼る会社経営のあり方は、安定しているようでいて、

実は危険性を孕んでいます。

広島市の委託事業への入札方法は、2年前に変更になりましたが、

基本的に金額の高い仕事から順に入札していきます。

金額が高い仕事を落札できた=ラッキー、と単純にはなりません。

 

入札の恐ろしいところは、来年も同じ仕事が落札できる、という保証が全くないことです。

同じ仕事は無理だとしても、同じ規模の仕事が永久的に落札できれば、何も困りません。

ところが、来年度の入札は、今年度の委託業者には何の保証もありません。

私がこういう話をしても、なかなか理解してもらえない方もいます。

入札の本当の恐ろしさは、人員・車両を入札前に全て揃えなければならないことです。

 

入札の前段階で、人員・車両を揃え、いざ落札した業務が、

予定よりも人員にして2名、車両にして1台少ない業務であったということは、当然起こります。

この場合、年度を跨いだ瞬間に、人員2名、車両1台が余剰の経営資源ということになります。

 

もし、この余剰の経営資源をリストラするとします。

そうすると、さらに翌年度の入札では、人数、台数ともに減った状態で入札に臨まなければなりません。

5台10人の経営資源を揃えて入札し、結果落札できたのが4台8人の仕事であったとします。

それに合わせて経営規模を縮小すると、その翌年度の入札においては、

5台10人の入札にはもう参加できず、最大でも4台8人の業務から入札せざるを得ません。

しかし、その際に落札できるのは、3台6人の業務かもしれないわけです。

当然のことながら、台数、人数が減れば、落札金額も下がっていきます。

 

会社経営を合理的に振舞えば、必然的に年々、

委託業務の規模が小さくなるという宿命にあります。

逆に、無理して大きな仕事を落札した場合、

その翌年度は人員、車両が余剰資源になる可能性が高いということにもなります。

そうなると、一番の理想は、入札は毎年同じ規模の業務に参加し、

毎年同じ規模を落札する、ということになるかと思います。

しかし、入札はくじ引きみたいなものですから、それが可能な保証がどこにもない。

入札によって生まれる歪みは、ゲーム参加者である各収集運搬業者が負担し合うことになります。

 

2016年現在、広島市は新規の一般廃棄物収集運搬業の許可をほぼ出さないため、

決まった業者の中で毎年毎年入札していることになり、

なんとか予定調和が保たれている、というのが実態ではないでしょうか。

しかし、本質的に委託業務には非効率性を抱え続けなければならないであろう。

と私は感じています。

 

以上、入札のネガティブな面をやや強調して文章を書きました。

もちろん、廃棄物処理業者が他の事業とのバランスの中で、

委託をいくつかの柱の一本として位置付けられれば、

それは企業の信頼や安定に繋がるものでもあります。

 

(河野)