役員の犯罪・刑罰と産廃業許可取消
行政書士として数多くの廃棄物処理業許可業者とお付き合いしていく中で、
避けられない問題のひとつが、行政処分、そして許可取消。
欠格事由にはいくつかありますが、今回のテーマは役員の犯罪・刑罰について解説します。
なかなか表立って言いにくい問題でもありますが、
もしかしたら、ここでの手続きは企業の存続の『命綱』かもしれません。
この記事の目次 |
役員が欠格事由に該当すれば、廃掃法の許可は取消に
産業廃棄物収集運搬業許可、処分業許可業者の役員(取締役と監査役)は、
会社に対して大きな責務を負うことになります。
それはもしも万一、会社の取締役や監査役が欠格事由に該当するようなことがあれば、
その欠格事由該当を理由に、会社の廃掃法の許可が取消されてしまうからです。
もしも、廃棄物処理業許可業者の取締役等が刑に処せられた場合、
会社の許可が飛んでしまう(=許可取消)ということです。
実はこの規定、大変恐ろしい規定なのです。
廃掃法上の欠格事由の特殊性
日本国内には、無数の「〇〇法」という法律があり、
それぞれの法律で欠格事由を定めています。
その多くが、その許可業種(〇〇業)に関する行為につき処分があれば、
欠格事由に該当する、というものになっています。
ところが、廃掃法の欠格事由というのは、他の法律とは異なり、
いかなる種類の犯罪であろうとも、収集運搬業許可、処分業許可が、
欠格事由該当によって取消されてしまうということになります。
たとえば、ある収集運搬業許可を有する業者の取締役が、
道路交通法に違反して禁固以上の刑に処せられたとしても、
欠格事由に該当し収集運搬業許可は取り消されます。
このような廃掃法上の欠格事由は、業法としては特殊なものです。
許可取消と許可再取得のリスク
収集運搬業許可であれば、欠格事由に該当する役員に辞任してもらうか解任し、
再度許可申請をすれば、数カ月後には収集運搬業許可の再取得が可能です。
しかし、これが処分業許可であればどうでしょうか。
もちろん、処分業許可も欠格事由該当により取り消されます。
それから、施設設置許可も取消の対象になります。
処分業許可の取消は倒産を招く
処分業許可、施設設置許可を再取得するとすれば、
期間も費用も莫大になります。
数カ月間で済むような話ではなく、
事前協議、住民説明会、生活環境影響調査など、もう一度一からの手続きになりますので、
最低1年からという長期の話になります。
欠格事由該当までに処分業を経営していたということは、
すでに従業員も処理施設も有しているということでしょうが、
許可が取消されれば、これらの施設は全て稼動することができません。
結果として、大損失、処分業者は許可取消しにより、
倒産の危機を招きます。
それでは、会社の役員が欠格事由に該当した場合にはどうすればいいのか。
許可業者は、役員の一人が何らかの事情で逮捕等された場合、
許可取消を甘受するしかないのでしょうか?
これに関しては、許可取消を防ぐ方法があります。
この方法に関しては、実は東京高等裁判所が裁判例の主文の中で、
語ってくれています。
その方法とは、実に単純。
産廃業者の役員が逮捕された場合の対処法
役員が産業廃棄物収集運搬業務に関係のないことについて、
欠格事由に該当したことで許可を取消されたという事案で、
実際に憲法違反だとして争った裁判例があり、
その中で、東京高裁は合憲の理由として、
以下のように判示しています。
「他方、役員が犯罪に及んだ場合には、その刑が確定するまでに役員を解任するか、
役員が辞任すれば許可取消を免れることができるものであるから・・・」
つまり、役員が逮捕等された場合は、
会社としては役員を解任等してしまえば、会社の許可は維持できる、と言っているのです。
刑事犯と言うのは、裁判を通じて刑が確定して、はじめて刑に処せられることになります。
役員が逮捕等されても、その役員を役員から外すための時間はあります。
株主総会で取締役解任の決議をして、その旨の登記申請をすることになります。
登記完了後には、産業廃棄物収集運搬業・処理業の変更届出をすることで、
会社は欠格のない状態となって、許可を存続できるのです。
逮捕されればすぐに対処しなければ産廃業許可は取り消されるかも
会社の役員が逮捕されるようなことがあれば、
産業廃棄物処理業の許可を有する会社としては、すぐに手を打たなければなりません。
逮捕理由は、廃棄物処理法違反や水質汚濁防止法等の環境法令違反に限りません。
どのような犯罪であろうとも、禁固以上の刑に処されると、
欠格事由に該当し、許可が取消されてしまうのです。
(河野)
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